カレーは一度に多めに作り、翌日以降も食べる家庭が多い料理です。「昔から、作り置きしたカレーは1日1回火を通せば大丈夫と聞いた」「毎日沸騰させれば腐らないのでは?」と考える人もいるでしょう。
しかし、作り置きしたカレーを安全に保存するうえで重要なのは、1日1回加熱することではありません。調理後にできるだけ早く冷やして冷蔵・冷凍し、食べるときに必要な分だけ十分に再加熱することが基本です。
この記事では、作り置きしたカレーを毎日加熱する必要があるのか、食中毒の原因となる菌、じゃがいもや肉など具材による違い、再加熱による味の変化、ドライカレーなど種類による違いまで解説します。
作り置きしたカレーは1日1回火を通す必要はない
結論からいうと、冷蔵・冷凍して適切に保存しているカレーを、保存のためだけに1日1回加熱する必要はありません。
むしろ、鍋いっぱいのカレーを毎日温めて、その後またゆっくり冷ますことを繰り返すと、菌が増えやすい温度帯を何度も通ることになります。重要なのは「毎日加熱したか」ではなく、「調理後や再加熱後に常温で長時間放置しなかったか」です。
保存のために毎日加熱するより、調理後に速やかに冷やすことが重要です。
そのため、カレーが余った場合は鍋を室温に置いたままにせず、浅い保存容器などに1食分ずつ小分けし、できるだけ早く冷蔵庫や冷凍庫へ入れるのが基本です。食べるときだけ必要な量を取り出して温めましょう。
カレーで注意したいのはウェルシュ菌
作り置きしたカレーで特に注意したい食中毒菌が「ウェルシュ菌」です。
ウェルシュ菌は土壌など自然界に広く存在し、酸素の少ない環境で増えやすい性質があります。カレーやシチューなどの煮込み料理は、鍋の内部が酸素の少ない状態になりやすいため、ウェルシュ菌による食中毒の原因食品になることがあります。
ウェルシュ菌の一部は、芽胞という熱に強い状態になり、100℃で1時間加熱しても生き残ることがあります。つまり「一度沸騰させたから菌は全部いなくなった」とは限りません。
食品安全委員会によると、ウェルシュ菌は43~45℃付近でよく増殖し、カレーなどを自然放冷してゆっくり冷ますと、冷却中に増殖しやすくなります。農林水産省も、ウェルシュ菌を増やさないため、作った煮込み料理はできるだけ早く冷まし、速やかに冷蔵・冷凍するよう案内しています。
このため、大鍋のカレーをコンロの上に置き、「毎日一度沸騰させれば大丈夫」という保存方法は避けた方がよいでしょう。
正しい保存は「早く冷やす」がポイント
浅い容器に小分けする
カレーを鍋のまま冷ますと、表面は冷えていても中心部はなかなか温度が下がりません。そこで、1~2食分程度ずつ浅い容器に小分けすると、鍋のまま冷ますより早く温度を下げやすくなります。
農林水産省も、底の浅い平たい容器や保存袋などに小分けし、粗熱をできるだけ早く取って冷蔵・冷凍する方法を案内しています。
「完全に冷めるまで数時間室温に置いてから冷蔵庫へ」という方法はおすすめできません。冷ます時間が長くなるほど、菌が増殖できる温度にとどまる時間も長くなるためです。

食べる分だけ十分に再加熱する
冷蔵したカレーを食べるときは、必要な量だけ取り出して再加熱します。
厚生労働省は、残った食品を温め直す際は75℃以上を目安に十分加熱するよう案内しています。カレーはとろみがあり、鍋底や中心部に温度差ができやすいため、鍋で温める場合は底からよくかき混ぜましょう。
電子レンジでも、中央だけ冷たいなど加熱むらが起こることがあります。途中で一度取り出して混ぜるなどし、全体が十分に熱くなるようにします。
冷蔵したカレーは「何日なら絶対安全」とは言い切れない
冷蔵したカレーについて、「3日なら大丈夫」など日数だけで判断するのは避けましょう。保存期間や安全性は、調理時の衛生状態、作ってから冷蔵庫へ入れるまでの時間、冷蔵庫の温度、取り分け方などによって変わります。
厚生労働省は、残った食品について「時間が経ち過ぎたら捨てる」、農林水産省も冷蔵した調理済み食品はなるべく早く食べきるよう案内しています。すぐに食べない分は、早い段階で冷凍しておくと保存中に菌が増えるリスクを抑えやすくなります。ただし、冷凍しても菌がすべて死滅するわけではないため、解凍後も十分な再加熱が必要です。
1日1回加熱すれば常温保存できるわけではない
「毎日1回沸騰させれば、冷蔵庫に入れなくてもよい」という考え方には注意が必要です。
再加熱によって菌の多くが死滅しても、ウェルシュ菌の芽胞は熱に強く、生き残ることがあります。その後、カレーを室温でゆっくり冷ますと、残った芽胞が発芽して菌が増える可能性があります。
つまり、「毎日加熱すること」よりも、「菌を増やさないよう速やかに冷却して低温保存すること」が重要です。
一度温めたカレーを再び保存する場合も、長時間室温に置かず、再度速やかに冷やす必要があります。そのため、衛生面だけを考えても、大鍋全体を毎日温めるより、最初から小分けして保存し、食べる分だけ再加熱する方が扱いやすいでしょう。
なお、見た目やにおいに問題がなくても、食中毒菌が増えているかどうかを判断できるとは限りません。農林水産省も、においや色、味だけでは食中毒菌がどの程度いるか判断できないとしています。保存状態に不安がある場合は、再加熱して食べようとせず廃棄する方が安全です。
じゃがいもや肉の有無で保存方法は変わる?
じゃがいもが入っていても基本は同じ
「じゃがいも入りのカレーは傷みやすい」と聞くことがありますが、じゃがいもの有無だけで保存方法を変える必要はありません。ウェルシュ菌は土壌などに広く存在し、食品安全委員会は、食肉・魚介類・野菜類を使ったカレーなどで食中毒が起こることが多いとしています。
つまり、「じゃがいもを入れなければ常温保存でも安全」ということではありません。じゃがいもなしのカレーでも、速やかな冷却と低温保存が必要です。
一方、味や食感には違いがあります。じゃがいもは再加熱を繰り返すと崩れやすく、とろみが強くなったり、ざらついた食感になったりすることがあります。また、冷凍すると食感が変わりやすいため、冷凍前にじゃがいもを取り除く、またはつぶしておく方法もあります。
なお、じゃがいもの芽や緑色になった皮にはソラニンやチャコニンという天然毒素が多く含まれることがあります。これは作り置きによるウェルシュ菌とは別の問題で、調理前に芽や緑色の部分を十分取り除く必要があります。
肉なしカレーでも油断はできない
肉を使っていない野菜カレーでも、食中毒対策の基本は同じです。ウェルシュ菌は肉だけに存在する菌ではないためです。
ただし、肉入りカレーを作る場合は、生肉を扱った手や包丁、まな板などから他の食品へ菌を移さないことも重要です。調理時には肉を中心まで十分加熱し、加熱後のカレーも常温に長時間放置しないようにしましょう。

毎日火を通すとカレーはおいしくなる?
カレーは翌日になると「味がなじんでおいしい」と感じる人も多いでしょう。農林水産省の食中毒予防ページでも、「カレーは翌日がおいしい」といわれることに触れたうえで、何日かに分けて食べる家庭が多いと紹介しています。
しかし、「1日1回加熱すればするほど味が良くなる」というわけではありません。
時間がたつことで具材とルーの味がなじみ、角の取れた味に感じることはあります。一方、何度も加熱すると水分が蒸発して味が濃くなったり、鍋底が焦げやすくなったりします。スパイスの香りも加熱のたびに飛びやすく、肉が硬くなったり、じゃがいもやにんじんが崩れたりすることもあります。
そのため、味の面でも「鍋全体を毎日加熱する」メリットは大きくありません。翌日のカレーを楽しみたい場合も、適切に冷蔵保存し、食べる量だけ温める方法が向いています。
ドライカレーやスープカレーでも考え方は同じ
カレーの種類が変わっても、「常温に長時間置かない」「早く冷やす」「食べる前に十分再加熱する」という基本は共通です。
スープカレーは水分が多くても、鍋で大量に作れば中心まで冷えるのに時間がかかります。通常のカレーと同様、小分けして冷蔵・冷凍しましょう。
キーマカレーや水分の少ないドライカレーも、完全に菌が増えない食品になるわけではありません。ひき肉や野菜を使っている場合は、通常の作り置き料理として温度管理が必要です。
また、「ドライカレー」がカレー味の炒めご飯を指す場合は、ご飯の保存にも注意が必要です。食品安全委員会によると、セレウス菌による食中毒は米飯類や麺類が原因となることが多く、作り置きを避け、調理後すぐ食べることが重要とされています。残す場合は室温に長く置かず、速やかに冷蔵・冷凍しましょう。
まとめ
作り置きしたカレーは、保存のために1日1回火を通す必要はありません。
大切なのは、調理後のカレーを室温に長く置かず、浅い容器などに小分けして速やかに冷蔵・冷凍することです。そして食べるときに必要な分だけ取り出し、全体をよく混ぜながら十分に再加熱します。
カレーで注意したいウェルシュ菌は熱に強い芽胞を作るため、「毎日沸騰させれば常温でも安全」と考えることはできません。じゃがいもや肉が入っていない場合も、保存の基本は同じです。
また、翌日のカレーは味がなじんでおいしく感じることがありますが、何度も加熱すると香りが弱くなったり、具材が崩れたりする場合があります。
安全面でも味の面でも、「鍋を毎日温め直す」より「作ったら早く冷やして小分け保存し、食べる分だけしっかり温める」と覚えておくとよいでしょう。
引用・参考資料
- 厚生労働省「家庭での食中毒予防」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/01_00008.html - 食品安全委員会「『食の安全ダイヤル』に寄せられた質問等Q&A(生物系物質)」
https://www.fsc.go.jp/dial/dialqa20170608_4.html - 農林水産省「煮込み料理を楽しむために~ウェルシュ菌による食中毒にご注意を!!~」
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/f_encyclopedia/clostridium.perfringens.html - 農林水産省「冷蔵庫のかしこい使い方~知ってお得な食品の保存~」
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/frige.html - 農林水産省「ソラニンやチャコニンによる食中毒を防ぐには」
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/solanine/yobou/yobou.html - 農林水産省「家庭で実践! 食中毒予防策 食事編」
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2212/spe1_03.html - 食品安全委員会「セレウス菌について」
https://www.fsc.go.jp/fsciis/questionAndAnswer/print/mob07011000006 - 食品安全委員会「【読み物版】生活の中の食品安全 -調理とリスクマネジメント- (食品安全委員会委員 石井 克枝) その1 平成29年3月17日配信」
https://www.fsc.go.jp/e-mailmagazine/mailmagazine_h2903_r1.html

