パソコン作業は1時間ごとに10分休憩しないと違法?厚生労働省の目安と法律を解説

仕事でパソコンを使っていると、「1時間作業したら10分休憩しなければならない」と聞くことがあります。

実際、厚生労働省はパソコンなどを使う「情報機器作業」について、連続作業を1時間以内とし、次の連続作業までに10~15分の「作業休止時間」を設けるよう示しています。

ただし、この10~15分は労働基準法で義務付けられた休憩時間ではありません。そのため、「1時間ごとに10分休ませなかった=直ちに違法」というわけではありません。

この記事では、パソコン作業を1時間を目安に区切る理由を中心に、法律上の休憩との違いや、他の仕事で定められている休止時間について解説します。

目次

パソコン作業は1時間を超えて続けないのが目安

厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」では、パソコンやタブレットなどを使う作業について、次のような作業時間の管理を示しています。

  • 一連続作業時間が1時間を超えないようにする
  • 次の連続作業までに10~15分の作業休止時間を設ける
  • 1時間以内(60分以内)の連続作業中にも1~2回程度の小休止を設ける
パソコン作業は60分以内を目安に区切り、途中に1~2回の小休止を入れたうえで、次の作業までに10~15分の作業休止を設ける流れを示した図

たとえば9時にパソコン作業を始めた場合、10時ごろまでにいったん情報機器作業を中止し、10~15分は画面から離れたり、書類整理など別の業務に切り替えたりしてから、次の情報機器作業に移る形が目安になります。

また、小休止について厚生労働省の解説では、1~2分程度、作業者が自由に取れるようにすることが示されています。

「情報機器作業」はデスクトップパソコンだけではない

ノートパソコン、タブレット、スマートフォンなど、ディスプレイを備えた情報機器を使ってデータ入力、文章作成、画像確認、プログラミングなどを行う作業も含まれます。

なお、現在の「情報機器ガイドライン」は、従来の「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を2019年に見直したもので、「VDT」という用語は「情報機器」に置き換えられました。

ただし、すべての人が同じ頻度・同じ長さで情報機器を使うわけではありません。厚生労働省も、作業の種類や拘束性などに応じて適切に管理する考え方を示しています。

「会社でパソコンを少し使ったら必ず10分休む」という単純なルールではなく、長時間連続して画面を見続ける仕事ほど意識したい目安と考えると分かりやすいでしょう。

なぜ1時間ごとに作業を止める必要がある?

パソコン作業では、長時間にわたって画面を見続けるだけでなく、同じ姿勢でキーボードやマウスを操作し続けます。

そのため、目だけでなく、首、肩、腰、背中、腕などにも負担がかかります。

厚生労働省のガイドラインでは、一連続作業時間を1時間とした背景として、1時間を超えて作業した場合に誤入力が増えたり、覚醒水準や視覚機能に関する指標に変化がみられたりした研究結果などが挙げられています。

集中していると疲労を感じにくいこともありますが、長時間同じ姿勢を続ければ身体への負担は蓄積します。

「疲れを感じてから対応する」のではなく、1時間を一つの区切りとして情報機器作業から離れることが大切です。

なお、厚生労働省のガイドラインでは、作業時間だけでなく、書類・キーボード上の照度を300ルクス以上とすることや、ディスプレイの位置・明るさ、椅子の高さなどを調整することも示されています。

10~15分は完全に仕事を休まないといけない?

ここが、法律上の「休憩」と混同されやすいポイントです。

厚生労働省が示している10~15分は、「作業休止時間」と呼ばれています。

これは、パソコンなどを使う情報機器作業をいったん中止する時間です。必ずしも仕事そのものを10~15分間休む必要はありません。

厚生労働省の解説でも、遠くを眺める、目を閉じる、身体をストレッチするほか、別の業務を行う時間として説明されています。

そのため、たとえばパソコン作業を止めて、

  • 書類を整理する
  • コピーを取りに行く
  • 紙の資料を確認する
  • 席を立って身体を動かす
  • 遠くを見て目を休ませる

といった過ごし方でも構いません。

反対に、休止時間中もスマートフォンを見続けていると、近い距離の画面を見続けることになるため、目を休ませるという点ではあまり適していません。

「1時間に10分休まないと違法」ではない

では、会社が1時間ごとの作業休止を設けなかった場合、違法になるのでしょうか。

結論として、厚生労働省の「1時間以内+10~15分」という基準はガイドラインであり、この10~15分を設けなかったことだけで直ちに労働基準法違反になるわけではありません。

ここで混同しやすいのが、労働基準法第34条で定められている「休憩時間」です。

法律では、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を、勤務時間の途中に与えなければならないとされています。

この休憩時間は労働者が自由に利用できる必要があります。

つまり、1時間ごとの10~15分の「作業休止」と、労働基準法で義務付けられた45分・60分の「休憩」は別のものです。

パソコン作業の10~15分の作業休止と、労働基準法で定められた6時間超45分以上・8時間超1時間以上の法定休憩の違いを比較した図

それでも会社側の対応が問題になることはある

10~15分の作業休止を設けなかっただけで即違法になるわけではありませんが、「ガイドラインだから無視してよい」という意味でもありません。

労働契約法第5条では、使用者に対し、労働者が生命や身体などの安全を確保しながら働けるよう必要な配慮をすることを求めています。ここでいう安全には心身の健康も含まれます。

たとえば、長時間のパソコン作業によって強い目の痛みや首・肩の痛みなどが生じていることを会社が把握しているのに、作業方法や環境を見直さず放置しているような場合には、安全配慮義務との関係が問題になる可能性があります。

ただし、安全配慮義務違反に当たるかどうかは、作業内容や勤務状況、健康状態など具体的な事情によって判断されます。

在宅勤務でも1時間を目安に区切ろう

在宅勤務では、上司や同僚の目がない分、自分のタイミングで作業を続けてしまいがちです。

厚生労働省は、自宅などで行う情報機器作業についても、できる限りガイドラインに準じて労働衛生管理を行うことが望ましいとしています。

在宅勤務でも、長時間の連続作業を避け、意識して情報機器作業を区切ることが大切です。

他の仕事にも作業時間や休止時間の基準がある

パソコン作業以外でも、身体への負担や事故の危険が大きい仕事には、独自の基準が設けられていることがあります。

たとえばトラック運転者は、改善基準告示により連続運転時間が4時間を超えないものとし、運転開始後4時間以内または4時間経過直後に、合計30分以上の運転中断を設けることが原則とされています。

また、一部の振動工具を使う作業では、厚生労働省の指針により、作業内容に応じて一連続の振動ばく露時間をおおむね10分以内または30分以内とし、その後5分以上の休止時間を設けることが示されています。

このように、すべての仕事に「1時間ごとに10分」という共通ルールがあるわけではありません。作業の種類によって必要な休止時間は異なります。

1時間ごとの作業休止が難しい職場ではどうする?

仕事の内容によっては、毎時決まった時刻に10~15分間パソコンから離れるのが難しいこともあります。

その場合でも、メール処理の後に紙の資料を確認する、オンライン会議の後に書類整理へ切り替えるなど、情報機器を使わない仕事を組み合わせれば、連続作業を区切りやすくなります。

作業が何時間も途切れず、目や肩などの不調が続いている場合は、上司や人事・総務、職場の衛生管理者や産業医などに相談する方法もあります。

特に症状がある場合は、「作業休止を取りたい」だけでなく、どの作業を何時間続けたときにどのような不調が出るのかを具体的に伝えると状況を共有しやすくなります。

まとめ

パソコンなどを使う情報機器作業について、厚生労働省は「一連続作業時間を1時間以内」とし、次の作業までに10~15分の作業休止時間を設けるよう示しています。

この時間は、労働基準法上の休憩とは別です。したがって、1時間ごとに10~15分の休止を設けなかっただけで直ちに違法になるわけではありません。

一方、6時間を超える勤務で45分、8時間を超える勤務で1時間という法定休憩を与えない場合は、労働基準法上の問題になります。

パソコン作業では、「法律で罰せられるか」だけではなく、目や身体への負担を減らすために、1時間を目安に作業を区切ることが大切です。

引用・参考資料

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