外出先や仕事中に飲んでいたペットボトルが残り、「冷蔵庫に入れておけば翌日も飲めるのでは?」と思うことがあります。しかし、ペットボトルに直接口をつけた場合は、未開封の状態とは衛生条件が大きく変わります。
結論からいうと、口をつけたペットボトルは、できるだけ一度に飲み切るのが基本です。冷蔵庫に入れれば常温より微生物の増殖を抑えやすくなりますが、「翌日なら必ず安全」とはいえません。飲料の種類、口内細菌の状態、飲み方、保存温度などで条件が変わるためです。
一方、最初から清潔なコップに注ぎ、残りをすぐ冷蔵した場合は、直接口をつけた場合より汚染の機会を減らせます。この記事では、翌日も飲めるのかを中心に、安全面や冷蔵・常温の違い、味や炭酸の変化、飲み物ごとの注意点を解説します。
口をつけたペットボトルはなぜ傷みやすい?
人の口の中には多くの微生物が存在します。ペットボトルへ直接口をつけて飲むと、唾液などを介して微生物が飲料中へ入り込みます。食品安全委員会も、一度開封したペットボトル飲料では細菌などが増殖する可能性があり、口をつけた場合は一度に飲み切ることを勧めています。
重要なのは、見た目やにおいだけでは判断できないことです。濁りや異臭がなくても細菌などが増えている場合があり、食品安全委員会は「何時間以内なら大丈夫」という一律の目安を示していません。飲料の種類や保存状況などが人によって大きく異なるためです。
口をつけたからといって、ただちに危険な状態になるという意味ではありません。しかし、時間が経つほど増殖する機会が生まれるため、飲み残しを長時間保存することは避けた方が安全です。
冷蔵庫に入れたものなら翌日も飲める?

冷蔵保存には、微生物の増殖を抑える効果が期待できます。2020年の食品衛生学雑誌の研究では、各種清涼飲料水に標準菌株を接種した試験で、この試験の4℃条件では7日間、微生物の増殖は確認されませんでした。ただし研究者は、開栓後に多くの菌が混入した場合や、長時間常温に置いてから冷蔵した場合なども考えられるため、冷蔵は腐敗の完全な抑止にはならないとしています。
つまり、「すぐ冷蔵した翌日」と「半日持ち歩いてから夜に冷蔵した翌日」は同じ条件ではありません。冷蔵庫へ入れたという事実だけで、安全性を保証することはできないのです。
食品安全委員会も、分けて飲む場合はコップに注ぎ、再度栓をしたボトルを冷蔵庫に入れて、できるだけ早く飲み終えるよう案内しています。口をつけたものについては、一度に飲み切ることが推奨されています。
そのため、直接口をつけたペットボトルは、冷蔵していても翌日まで持ち越さず、できるだけ早く飲み切るのが安全側の判断です。
常温で一晩置いたものは?
常温で一晩置いた飲み残しは、翌日に飲むことをおすすめできません。特に夏場や暖房の効いた室内、車内などでは温度が高くなり、微生物が増殖しやすい条件になる可能性があります。
宇都宮市衛生環境試験所では、口をつけて半分ほど飲んだ5種類の飲料を、夏場の室内を想定した30℃で48時間保存する試験を行っています。ミルクコーヒーは飲用直後に1mL当たり約1,000個だった細菌が、24時間後には約1,000万個、48時間後には3億個以上まで増えました。麦茶も24時間後に約9,000個、48時間後には3万個を超えています。
この結果だけで、すべての飲料が同じように増えるとはいえません。しかし、「常温で一晩くらいなら平気」と一律に判断するのが適切でないことは分かります。
また、開栓後の飲料では、細菌だけでなくカビや酵母が繁殖する場合もあります。特に酵母が増殖して二酸化炭素が発生すると、ボトル内部の圧力が上がり、膨張・破裂することがあります。炭酸飲料ではなくても起こり得るため、飲み残しを車内などに放置しないようにしましょう。
お茶・水・ジュースなどで違いはある?
微生物の増えやすさは、飲料の成分やpH、混入した微生物の種類によって異なります。そのため、「水だから安全」「お茶だから長持ち」とは単純にいえません。

緑茶
緑茶にはカテキンなど、微生物の増殖を抑える方向に働く成分があります。宇都宮市の30℃での試験では、緑茶の菌数は時間とともに減少しました。
ただし食品安全委員会は、カテキンによって開封後の細菌などの増殖を防ぐ効果はあまり見込めないとしており、茶飲料も他のペットボトル飲料と同様に扱うよう案内しています。緑茶だから翌日まで大丈夫、と考えるのは避けましょう。
麦茶
麦茶は、保存条件によって細菌が増えることがあります。前述の宇都宮市の試験でも、30℃保存で時間とともに細菌数が増加しました。
別の研究でも、麦茶では温度や微生物の種類によって増殖の仕方が異なる結果が示されています。お茶という名称でも、緑茶と麦茶を同じ条件で考えない方がよいでしょう。
ミネラルウォーター
水には糖分などが少ないため、傷みにくそうに見えます。しかし、口をつければ微生物は入り込みます。2009年の研究では、直接口をつけて飲んだミネラルウォーターを室温保存すると時間の経過とともに細菌増殖が認められ、冷所保存でも10時間までは増殖が確認されています。
したがって、無糖の水だから何日も安全というわけではありません。
スポーツドリンク・果汁飲料
宇都宮市の試験では、pH約3.5だったスポーツ飲料と果汁100%オレンジジュースでは、細菌数が増えず減少しました。酸性環境が細菌の増殖を抑えたと考えられています。
ただし、別の研究では、スポーツドリンクやオレンジジュースでも、条件によって酵母が増殖することが確認されています。酸性ならすべての微生物が増えないわけではないため、「酸っぱい飲料なら翌日でも安全」と判断するのは禁物です。
ミルク入りコーヒーなど
糖分やタンパク質などを含む飲料は、条件によって微生物が増殖しやすくなる可能性があります。宇都宮市の30℃試験では、5種類の中でミルクコーヒーの細菌数が最も大きく増えました。直接口をつけて飲んだものを常温で長時間置いた場合は、翌日へ持ち越さない方がよいでしょう。
コーラなどの炭酸飲料は翌日どうなる?
コーラや炭酸水では、衛生面に加えて炭酸が抜けるという問題があります。
炭酸飲料を開封すると、液体に溶けている二酸化炭素が外へ逃げ、新しい平衡状態へ向かうため、時間とともに炭酸が弱くなります。また、同じ圧力なら低温ほど二酸化炭素は水に溶けやすいため、炭酸を保つという点でも常温放置より冷蔵する方が有利です。
キャップをしっかり閉めれば二酸化炭素が逃げる速度を抑えることはできますが、一度開栓したものを未開封の状態に戻すことはできません。翌日には刺激が弱くなり、開けたてとは味わいが変わっていることがあります。
なお、炭酸が入っていること自体を安全性の保証と考えることはできません。直接口をつけた場合は、他の飲料と同様に早めに飲み切るのが基本です。
翌日になると味は変わる?
開栓後は、炭酸飲料に限らず、香りや風味が少しずつ変化することがあります。お茶や果汁飲料なども、開栓によって空気に触れるため、開けたてと同じ風味を保ち続けることはできません。
また、味やにおいが普段どおりでも、安全とは限りません。味を重視する場合も衛生面を考える場合も、開栓後は早めに飲み切りましょう。
飲み切れないときの保存方法

一度で飲み切れない場合は、最初から直接口をつけず、清潔なコップへ必要な分だけ注ぎます。残りはすぐにキャップを閉めて冷蔵し、できるだけ早く飲み切りましょう。
すでに口をつけたものや、常温で長時間持ち歩いたもの、高温の車内に置いたものは翌日に残さない方が安心です。ボトルの膨張や濁り、浮遊物、普段と違うにおいがあれば処分してください。ただし、見た目やにおいに異常がなくても、安全とは限りません。
なお、飲み残しを長持ちさせるために、通常のペットボトルをそのまま冷凍するのは避けましょう。冷凍兼用として設計された商品を除き、通常の清涼飲料の容器を凍らせると、容器が膨張して破損する危険があります。商品の表示に従って保存してください。
まとめ
飲みかけのペットボトルは、冷蔵すれば常温より微生物の増殖を抑えやすくなりますが、翌日まで安全だと一律にはいえません。食品安全委員会も、口をつけた場合に「何時間以内なら大丈夫」という目安は示しておらず、一度に飲み切ることを勧めています。
飲料の種類によって微生物の増え方には差がありますが、緑茶、水、スポーツドリンク、コーラなど、どれも「この種類なら翌日でも必ず大丈夫」とはいえません。
飲み切れない場合は「直接口をつけずコップに注ぐ」「残りはすぐ冷蔵する」「できるだけ早く飲み切る」の3点を意識しましょう。
引用・参考資料
- 食品安全委員会「【読み物版】生活の中の食品安全‐ペットボトル、飲み残しに気をつけよう‐その1」
https://www.fsc.go.jp/e-mailmagazine/mailmagazine_h2905_r1.html - 食品安全委員会「【読み物版】生活の中の食品安全‐ペットボトル、飲み残しに気をつけよう‐その2 ◆Q&A◆」
https://www.fsc.go.jp/e-mailmagazine/mailmagazine_h2905_r2.html - 全国清涼飲料連合会「清涼飲料水が入った容器を、そのまま凍らせても大丈夫でしょうか?」
https://www.j-sda.or.jp/learning/qa/qa01/qa13.php - 宇都宮市 衛生環境試験所「(9)口をつけたペットボトル飲料、飲み残しは飲まない方がいい?」
https://www.city.utsunomiya.lg.jp/kurashi/eisei/shikenjo/1014682.html - 吉井美穂、八塚美樹、安田智美「小型ペットボトル飲料使用における安全性の検討」日本看護研究学会雑誌 2009年 32巻1号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsnr/32/1/32_20081201009/_article/-char/ja/ - 後藤慶一ほか「開栓したペットボトル入り清涼飲料水における微生物の増殖挙動」食品衛生学雑誌 2020年 61巻5号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shokueishi/61/5/61_200/_article/-char/ja/ - University of Florida IFAS Extension「A Guide to Carbonating Beverages at Small Scale」
https://ask.ifas.ufl.edu/publication/FS379

