SNSでは、プロフィール欄に「大手企業勤務」「国家公務員」「市役所職員」などと書いている人もいます。
では、実際にはその職業ではないのに、見栄を張る目的で職業・勤務先を偽った場合、犯罪になるのでしょうか。
結論からいうと、職業についてウソをついたからといって、すべてのケースが直ちに犯罪になるわけではありません。
ただし、「大手企業勤務です」と民間企業の勤務先を偽る場合と、「警察官です」など公的な職を装う場合では、法律上の扱いが同じとは限りません。
さらに、ウソの肩書きを信用させてお金を受け取ったり、偽の社員証や身分証を作ったりすると、詐欺罪や文書偽造罪など別の犯罪が問題になる可能性があります。
この記事では、SNSで職業を偽った場合に、どのような違いがあるのかを具体例で解説します。
SNSで職業を偽るだけなら犯罪になる?
まず、職業についてウソをついたという理由だけで、すべて同じ法律が適用されるわけではありません。
「会社員」と名乗る場合、実在する会社名を出す場合、公的な職を名乗る場合、さらにその肩書きを金銭の受け取りに利用する場合では、問題となる法律が異なる可能性があります。
そのため、「職業を偽ったか」だけではなく、何を名乗り、そのウソを何に使ったのかを見ることが重要です。
「大手企業勤務」とウソをついた場合は?
たとえば、実際には勤務していないにもかかわらず、SNSプロフィールに、
「大手商社勤務」
「外資系大手勤務」
などと書いたとします。
単に自分をよく見せるために「大手企業勤務」と書いただけで、直ちに犯罪になるとは限りません。ただし、そのウソをどのように利用したかによっては、別の犯罪が問題になることがあります。
では、「○○株式会社勤務」と実在する会社名まで書いたらどうでしょうか。
この場合も、会社名を偽って書いたという事実だけで必ず犯罪になるとはいえません。
ただし、その会社の社員であるという信用を利用して商品やサービスを販売したり、会社の公式見解であるかのような発信をしたりすれば、単なる勤務先についてのウソとは別の問題が生じる可能性があります。
また、虚偽の情報を流したり偽計を用いたりして会社の信用を傷つけたり、業務を妨害したりした場合には、刑法233条の信用毀損及び業務妨害罪が問題になることもあります。
つまり、「○○社の社員です」と名乗ったこと自体だけではなく、そのウソを利用して何をしたのかが重要です。

なお、実際に別の会社で働いている場合、SNS上の職業詐称の内容や会社への影響によっては、就業規則上の懲戒事由が問題になることもあります。ただし、懲戒の有効性は、行為の性質や態様など具体的な事情によって判断されます。
「公務員です」とウソをついた場合は?
民間企業の勤務先を偽る場合と違い、公的な職を装うケースでは軽犯罪法に注意が必要です。
軽犯罪法1条15号は、「官公職、位階勲等、学位その他法令により定められた称号」などを詐称した者を、拘留または科料の対象としています。
実際に最高裁には、軽犯罪法1条15号の『官職の詐称』に当たると判断した昭和56年11月20日の決定があります。
つまり、具体的な官公職を装う行為については、「大手企業に勤めている」とウソをつく場合とは別の法律上の問題が生じます。
ただし、ここで注意したいのが、SNSに単に「公務員です」とだけ書いたケースです。
軽犯罪法の条文は、「公務員」という言葉そのものではなく、「官公職」の詐称を規定しています。
そのため、「公務員」という表現だけでは一律に判断できず、どのような官公職を装ったのかなど、具体的な事情を確認する必要があります。
「警察官」「市役所職員」などと名乗った場合は?
「公務員です」という抽象的な表現よりも、
「警察官です」
「○○市役所の○○課職員です」
など、具体的な官公職や公的な立場を装うケースでは、軽犯罪法1条15号との関係がより問題になりやすくなります。
特に警察官など、公的な権限を持つと受け取られやすい立場を装う場合は注意が必要です。
たとえば、
「警察官なので法律に詳しいです」
「捜査関係者だから内部事情を知っています」
などと投稿すれば、一般の利用者の発言より信用される可能性があります。
さらに、軽犯罪法1条15号は、官公職などの詐称だけでなく、資格がないのに法令で定められた制服や記章などを使用する行為も対象としています。
警察庁も、警察官や検察官を名乗る人物が、ビデオ通話で制服姿を見せたり、身分証らしきものを提示したりして相手を信用させ、金銭をだまし取る手口について注意を呼びかけています。
もちろん、警察官を名乗ったというだけで詐欺罪になるわけではありません。
しかし、その肩書きを利用して相手を信用させ、金銭を出させるなどの行為につながれば、詐欺罪など、別の犯罪が問題になる可能性があります。
職業のウソを使ってお金を得た場合は?
職業のウソが特に大きな問題になりやすいのが、金銭の受け取りや契約に利用した場合です。
たとえば、
「私は大手企業勤務で年収1000万円なので、必ず返済できます」
とウソをつき、その勤務先や収入を信用した相手からお金を借りたケースを考えてみましょう。
刑法246条は、人を欺いて財物を交付させた場合を詐欺罪として処罰しています。
ただし、職業についてウソをついてお金を受け取れば、自動的に詐欺罪になるわけではありません。
勤務先についてのウソが、相手に金銭を交付させるための欺く行為と評価され、相手がそのウソを信じた結果として金銭を交付した場合には、詐欺罪が成立する可能性があります。
同じ「大手企業勤務です」というウソでも、SNSで見栄を張るだけの場合と、その信用を利用してお金を出させる場合では、法的な意味が大きく変わります。
SNSだけでなく、マッチングアプリなどで勤務先を偽り、相手がそのウソを信じて金銭を交付した場合も、詐欺罪が問題になる可能性があります。
偽の社員証や身分証を作った場合は?
「○○社勤務です」と文章で書くだけではなく、本物に見せるために偽の社員証を作った場合はどうでしょうか。
この場合、職業を偽ったこととは別に、私文書偽造などが問題になる可能性があります。
刑法159条では、行使の目的で、権利・義務や事実証明に関する私文書等を偽造・変造する行為などを処罰対象としています。
さらに、2025年6月12日に施行された刑法改正により、文書等として表示されて行使される電磁的記録についても、公文書や私文書の偽造に関する規定の対象となるよう整備されました。
そのため、紙で作った偽社員証だけでなく、スマートフォンの画面で見せる偽の社員証データなどについても、内容や名義、作成方法、利用目的によっては私文書偽造などが問題になる可能性があります。
ただし、「社員証風の画像を作ったら必ず私文書偽造罪になる」という意味ではありません。
社員証が刑法上の「事実証明に関する文書等」に当たるか、誰の名義で作られたのか、行使する目的があったのかなど、具体的な事情によって判断されます。
また、公務所や公務員が作成すべき文書等を偽造した場合には、公文書偽造等の規定が問題になる可能性があります。

大手企業勤務と公務員では何が違う?
SNSで職業を偽った場合の違いを整理すると、次のようになります。
| SNS上の行為 | 主な法的な考え方 |
|---|---|
| 「大手企業勤務」と文章だけでウソをつく | 通常、それだけで直ちに犯罪になるとは限らない |
| 「○○株式会社の社員」とウソをつく | 虚偽だけで必ず犯罪とはいえないが、使い方によって別の問題が生じる可能性 |
| 「公務員」とだけウソをつく | 軽犯罪法の「官公職」との関係は、名乗り方や具体的事情を踏まえて判断 |
| 「警察官」など具体的な官公職を装う | 軽犯罪法1条15号が問題になる可能性 |
| 偽の社員証・身分証を作って使う | 公文書偽造・私文書偽造などが問題になる可能 |
| ウソの職業を信用させて金銭を得る | 詐欺罪等が成立する可能性 |
まとめ
SNSで職業を偽った場合の法的な扱いは、何を名乗り、その信用を何に利用したかによって変わります。
単なる見栄として勤務先を偽る場合と、警察官など具体的な官公職を装う場合、さらにウソを信用させて金銭を得たり、偽の身分証を使ったりする場合は分けて考える必要があります。
SNSのプロフィールは気軽に変更できますが、公的な肩書きや実在企業の信用を利用すると、軽犯罪法や詐欺罪、文書偽造罪などが問題になる可能性があります。「少し盛っただけ」と考えず、事実と異なる職業・勤務先を安易に名乗らないようにしましょう。
法律関連記事の注意書き
本記事は、法令や公的機関の情報を参考に作成しており、作成過程の一部で生成AIを補助的に使用しています。
記事の内容は一般的な情報の提供を目的としたものであり、個別の事情によって法律上の判断が異なる場合があります。
具体的なトラブルについては、弁護士や関係する公的機関などへご相談ください。
引用・参考資料
- e-Gov法令検索「軽犯罪法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000039 - e-Gov法令検索「刑法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045 - e-Gov法令検索「労働契約法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128 - 法務省「令和7年版 犯罪白書 第2編/第1章/1 新規立法の動向」
https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/72/nfm/n72_2_2_1_0_1.html - 国立国会図書館「1.軽犯罪法1条15号にいう官職の詐称にあたるとされた事例 2.対話者の一方が相手方の同意をえないで会話等を録音することが違法でないとされた事例―いわゆるニセ電話事件上告審決定事件(最決昭和56.11.20)」
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I2889726 - 警察庁「ビデオ通話を悪用した“偽警察官・検察官”の詐欺に注意!!」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/250425/01.html

