洗濯物は裏返したまま干した方が早く乾く?乾燥時間や型崩れへの影響を解説

洗濯物を裏返して洗ったあと、「わざわざ表に戻してから干す必要はあるの?」と迷うことがあります。裏返すと、普段は内側にある縫い代やポケット周辺に風が当たりやすくなるため、早く乾きそうに感じる人もいるでしょう。

結論からいうと、洗濯物は裏返したまま干しても基本的に問題ありません。むしろ、ポケットや縫い代など、生地が重なって乾きにくい部分が内側にある衣類では、裏返すことで乾燥しやすくなる場合があります。

ただし、「裏返せばすべての洗濯物が短時間で乾く」というわけではありません。薄手のTシャツなど、表裏で厚みや構造がほとんど変わらない衣類では、裏返したことによる乾燥時間の差は小さいと考えられます。

この記事では、裏返して干すと何が変わるのか、乾燥時間や型崩れへの影響、生地による違いを解説します。

なお、洗濯するときに衣類を裏返した方がよいケースについては、「洗濯物は裏返して洗った方がいい?汚れ落ち・傷み・洗濯ネットとの違いを解説」で詳しく解説しています。

目次

洗濯物は裏返したまま干した方が早く乾く?

衣類によっては、裏返すことで乾きやすくなる場合があります。

新潟大学の広報誌「新大広報 No.215」では、教育学部で被服学などを担当する中村和吉准教授が、部屋干しの乾燥時間を短くする方法として、ポケットなど布の重なりが多いシャツは裏返して干す方法を紹介しています。また、スカートやパンツは裏返したうえで、前後を重ねず、内側に空気が流れるよう筒状につるす方法も紹介されています。

洗濯物が乾くには、布が含んでいる水分を周囲へ蒸発させる必要があります。そのため、生地同士が密着している部分や、何枚も重なっている部分は乾きにくくなります。

パンツのポケット、シャツの縫い代、厚手のウエスト部分などが代表例です。表向きではこれらが衣類の内側に隠れやすいのに対し、裏返すと外気に触れやすくなります。

つまり、裏返すこと自体に特別な乾燥効果があるわけではなく、「乾きにくい場所を外側へ出して風に触れやすくする」ことに意味があると考えると分かりやすいでしょう。

裏返すと乾くまでの時間はどれくらい変わる?

「裏返すと○分早く乾く」「乾燥時間が○%短くなる」と一律にはいえません。

洗濯物が乾くまでの時間は、素材や厚さ、脱水後に残っている水分量だけでなく、気温、湿度、風、衣類同士の間隔、布の重なり方などでも変わるためです。

佐々木シナ子・平松園江による布の乾燥に関する研究では、布の大きさや干し方によって乾燥速度が変わるほか、無風状態と風がある状態でも蒸発の速さに違いがみられています。布を竿に折り掛けするより、一辺を固定して広げて干した方が速く乾くことも示されています。

したがって、乾燥時間を短くしたい場合は、「裏返すかどうか」だけでなく、風が通るように干せているかが重要です。

たとえば厚手のパンツを裏返しても、前身頃と後ろ身頃がぴったり重なっていれば、内側には十分な空気が入りません。ピンチハンガーなどを利用し、腰回りを筒状に広げる方が乾きやすくなります。

裏返して干した方がよい衣類

裏返し干しが特に向いているのは、内側に厚い部分や生地が重なる部分がある衣類です。

裏返し干しが向いている衣類の例。ジーンズや厚手のパンツ、パーカー、ポケットの多い衣類、薄手のTシャツの干し方を比較

ジーンズや厚手のパンツ

ジーンズやチノパンは、ポケットやウエスト、縫い合わせ部分など生地が重なる場所が乾きにくい衣類です。裏返したうえで腰回りを筒状に広げると、風が通りやすくなります。

パーカーやスウェット

パーカーは厚手で乾きにくい部分が多いため、裏返して縫い代などを空気に触れさせましょう。フードも身頃に重ならないよう広げて干すことが大切です。

ポケットの多い衣類

カーゴパンツや作業着など、ポケットの多い衣類にも裏返し干しが向いています。

ただし、デザインによっては表側に立体的なポケットが付いていることもあります。その場合は、「裏返せばよい」と決めつけず、どちらの面に生地の重なりが多いかを確認して干しましょう。

薄手のTシャツなどは無理に裏返さなくてもよい

薄手のTシャツ、肌着、薄いポリエステル製のスポーツウェアなどは、裏返しても乾燥時間が大きく変わらないことがあります。

ポケットなどの重なりがなく、表面と裏面の構造がほとんど同じなら、裏返しても乾燥条件が大幅には変化しないためです。

洗濯した時点で裏返しになっているなら、そのまま干して構いません。一方、表向きになっているものを「早く乾かすためだけ」に毎回わざわざ裏返す必要性は低いでしょう。

裏返し干しは型崩れに影響する?

型崩れについては、裏返すかどうかより、洗濯表示に指定された干し方を優先しましょう。

消費者庁が案内している現在の洗濯表示には、つり干し、ぬれつり干し、平干し、ぬれ平干しがあり、それぞれに日陰干しを示す表示もあります。洗濯表示は、洗濯などの取扱いによって回復できない損傷を起こさないための情報を示すものです。

特にニットやセーターなどで「平干し」が指定されている場合は、裏返してハンガーにつるすのではなく、表示に従って平らな状態で乾かすことを優先してください。

また、裏返したときに袖や裾が丸まったままでは、生地が重なって乾燥しにくくなるうえ、乾いた後に形を整えにくくなることがあります。干す前に袖や縫い目を軽く整え、衣類本来の形に近づけておきましょう。

生地の種類によって乾きやすさは違う?

乾燥時間は衣類の形だけでなく、使われている繊維によっても変わります。

綿

綿を多く含む生地は、ポリエステルを多く含む生地より乾燥に時間がかかる傾向があります。

日本家政学会の研究発表では、綿とポリエステルを中心とした編地の乾燥実験で、綿100%のメリヤスが最も乾燥速度が小さく、ポリエステルを含む材料では乾燥速度が大きくなる傾向が示されています。

厚手の綿製スウェットやパンツでは、素材そのものが乾きにくいうえ、縫い目やポケットが重なるため、裏返して風通しを確保する効果が期待できます。

ポリエステル

ポリエステルは、綿より乾きやすい傾向があります。

繊維の種類と布の乾燥特性を調べた研究では、乾燥速度に関する指標は、ウール、絹、綿、ナイロン、アクリル、ポリエステルの順に大きくなり、ウールからポリエステルに向かうほど速く乾く傾向が報告されています。

そのため、薄手のポリエステル製スポーツウェアなどはもともと比較的乾きやすく、裏表による差も小さくなりやすいでしょう。

ただし、同じ「ポリエステル100%」でも、生地の厚さや編み方、衣類の構造は異なります。素材名だけで乾燥時間を決めつけることはできません。

ウールやニット

ウールを使ったセーターなどは、乾燥時間だけでなく型崩れにも注意が必要です。

先ほどの乾燥特性を比較した研究でも、ウールはポリエステルなどより乾燥が遅い傾向が示されています。

ただし、ウール製品は衣類ごとに構造や加工も異なるため、まず洗濯表示を確認してください。平干しが指定されていれば、裏表より平干しを優先します。

部屋干しと外干しで裏返しの効果は変わる?

洗濯物の乾きやすさは、衣類の構造だけでなく、干す場所の風や湿度にも左右されます。

部屋干しと外干しの違い。風通しや洗濯物の間隔、サーキュレーターの使用、色あせ対策など裏返し干しのポイントを比較

外干しでは風があると衣類の周囲の湿った空気が入れ替わりやすく、裏返して外側に出したポケットや縫い代にも風が届きやすくなります。ただし、風がほとんどない日や湿度が高い日は、屋外であっても乾燥に時間がかかることがあります。一方、部屋干しでは屋外ほど自然な空気の流れが生まれない場合があります。裏返して乾きにくい部分を外側へ出しても、洗濯物を密集させて干していると、その周囲に湿った空気がとどまりやすくなります。

部屋干しでは、衣類同士の間隔を空け、必要に応じて扇風機やサーキュレーターで風を送ると乾きやすくなります。

また、「外干しなら表向き、部屋干しなら裏返し」と決める必要はありません。裏返すかどうかは、干す場所よりも、衣類のどこに厚い部分や生地の重なりがあるかを基準に考える方がよいでしょう。

外干しでも部屋干しでも、裏返し干しはあくまで乾きにくい部分を空気に触れやすくする工夫のひとつです。天候や室内環境も含めて、風が通りやすい干し方を組み合わせることが大切です。

外干しでは色あせ対策にもなる

外干しでは、裏返すことで衣類の表側に直接当たる日光を減らし、色あせを抑えられる場合があります。染色布を使った研究でも、一部の試料や条件では、通常の天日干しより天日裏干しの方が色変化が小さい結果となっています。ただし、染料や洗濯・脱水条件などによって差があるため、すべての衣類で同じ効果が得られるとは限りません。

早く乾かしたいなら「裏返す+風通し」を意識する

早く乾かしたいときは、乾きにくい部分が内側にある衣類は裏返す、パンツは筒状に広げる、洗濯物同士に間隔を空けて風を通す、という3点を意識しましょう。
室内干しでは、扇風機やサーキュレーターなどで風を送ることも乾燥を助けます。

まとめ

洗濯物は、裏返したまま干しても基本的に問題ありません。

ポケット、縫い代、ウエストなど生地が重なる部分を外側に出せる衣類では、裏返すことで風に触れやすくなり、乾燥を助けることがあります。ジーンズや厚手のパンツ、パーカーなどでは特に試す価値があります。

一方、薄手のTシャツやスポーツウェアのように表裏で構造がほとんど変わらない衣類では、裏返しただけで乾燥時間が大きく短縮されるとは限りません。

早く乾かすうえでは、裏表以上に「生地を重ねない」「洗濯物同士の間隔を空ける」「風を通す」ことが重要です。

また、ニットなど型崩れしやすい衣類では、裏返すかどうかより洗濯表示を優先しましょう。

洗濯後に裏返しになっている衣類を毎回表へ戻す必要はありません。衣類の形や素材を見ながら、乾きにくい部分を風に当てられるように干すことがポイントです。

引用・参考資料

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