SNSで「不正選挙だった」と投稿するのは犯罪?候補者を名指しして不正を指摘した場合は?

SNSで「不正選挙だった」と投稿する法的リスクを解説する記事のサムネイル

選挙が終わった後、SNSでは「今回の選挙はおかしい」「不正選挙だった」といった投稿を見かけることがあります。

さらに踏み込んで、「○○候補が票を買収した」「会社の社員に自分へ投票するよう圧力をかけた」「老人ホームの職員が入居者の票を勝手に入れた」など、具体的な不正を指摘する投稿もあります。

では、このような内容をSNSに投稿すると犯罪になるのでしょうか。

結論からいうと、単に選挙への疑問や評価を述べただけで直ちに犯罪になるわけではありません。一方、特定の候補者が違法行為をしたという具体的な事実を、十分な根拠がないまま公表すると、名誉毀損罪や公職選挙法の虚偽事項公表罪などが問題になる可能性があります。

ポイントは、「選挙に対する意見」と「誰かが不正をしたという事実の断定」を分けて考えることです。

目次

SNSで「不正選挙だった」と投稿するだけなら犯罪?

「不正選挙だった」という言葉だけでは、直ちに犯罪になるとはいえません。

たとえば、「今回の結果には納得できない」「選挙制度に問題があると思う」といった投稿は、一般には政治的な意見や評価に近いものです。

一方で、「不正選挙だった。開票所で○○候補の票が1000票捨てられた」「集計担当者が票を書き換えた」などと具体的な出来事まで示せば、単なる意見ではなく、真偽を確認できる「事実」を述べていると受け取られる可能性が高くなります。

つまり、同じ「不正選挙」という言葉でも、前後の文章によって意味は大きく変わります。「~だと思う」「~ではないか」と疑問形にすれば必ず安全になるわけでもありません。文章全体から、特定の不正行為が実際にあったと読み取れるなら、法的な問題が生じる余地があります。

投稿例考え方
「今回の選挙結果には納得できない」意見・評価に近い
「今回の選挙、不正があったのでは?」文脈による。具体的事実を示しているかが重要
「○○候補が票を買収した」候補者の違法行為を具体的に告発する表現
「施設職員が入居者の票を勝手に○○候補へ入れた」選挙犯罪を具体的に告発する表現で、特に慎重さが必要
選挙への意見・疑問と、候補者の不正を具体的な事実として断定する投稿の違いを示した図解。具体的になるほど名誉毀損や公職選挙法違反のリスクが高まりやすいことを説明。

候補者を名指しして「不正をした」と投稿した場合

特定の候補者について「買収した」「不正投票を指示した」などとSNSで公表すると、刑法の名誉毀損罪が問題になる可能性があります。

刑法230条は、公然と事実を示して人の名誉を傷つけた場合について定めています。SNSの公開投稿のように不特定または多数の人が見ることのできる場所で、社会的評価を低下させる具体的な事実を示せば、名誉毀損の問題が生じ得ます。

ここで注意したいのは、「本当のことなら名誉毀損にならない」と単純にはいえないことです。名誉毀損罪は、示した事実が真実であっても成立する可能性があります。

一般に刑法230条の2第1項では、その事実が公共の利害に関するもので、専ら公益を図る目的があり、真実であることが証明された場合には処罰しないとされています。

一方、公務員や公選による公務員の候補者については同条3項に特例があり、その人物に関する事実について真実であることの証明があった場合には処罰しないとされています。

候補者の不正に関する情報は社会的な関心が高いテーマですが、だからといって「候補者なら何を書いてもよい」わけではありません。事実の裏付けが乏しい状態で犯罪行為を断定すれば、刑事上だけでなく、民事上の損害賠償などが問題になる場合もあります。裁判例でも、事実摘示による民事上の名誉毀損では、公共性・公益目的や真実性、真実と信じたことについて相当な理由があったかなどが判断されています。

候補者の虚偽情報を流すと公職選挙法違反になることも

候補者について虚偽の情報を流した場合は、名誉毀損だけでなく、公職選挙法235条の「虚偽事項の公表罪」が問題になることがあります。

特に同条2項では、候補者や候補者となろうとする人を当選させない目的で、その人物に関する虚偽の事項を公にしたり、事実をゆがめて公にしたりした場合を処罰対象としています。2026年9月時点の法定刑は、4年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。

この規定はSNSなどインターネット上の発信にも適用され得ます。国会審議でも、候補者の政策などについて虚偽情報をSNSで発信するケースについて、公職選挙法235条2項の対象となり得ることが政府側から説明されています。

ただし、「候補者について間違ったことを書いたら必ず犯罪」という意味ではありません。候補者等に関する内容なのか、虚偽または事実の歪曲といえるのか、当選させない目的があったのかなど、具体的な事情によって判断されます。

「他人の投稿をリポストしただけ」でも必ず安全とは限らない

自分で文章を書かず、他人の投稿をリポストやシェアしただけなら問題ないのでしょうか。

政府は国会で、シェアやリポストが公職選挙法235条2項に該当するかについて、個別具体の事実に即して判断されると答弁しています。

そのため、「自分が最初に言い出したわけではない」「~らしいと書いただけ」という理由だけで、必ず責任を免れられるとは考えない方がよいでしょう。

特に「○○候補が買収したらしい」「この施設では票を勝手に書いているらしい」といった重大な内容を拡散するときは、元の投稿が何を根拠にしているのか、公的な発表や一次資料があるのかを確認することが重要です。

「社員に自分へ投票するよう強要した」と投稿した場合

たとえば、SNSに「○○候補は自分の会社の社員に、自分へ投票するよう強要した」と投稿したとします。

これが事実ではないのに断定した場合は、候補者の社会的評価を大きく下げる内容であるため、名誉毀損が問題になる可能性があります。さらに、相手を当選させない目的など公職選挙法235条2項の要件を満たす場合には、虚偽事項公表罪が問題になる可能性もあります。

一方、本当に雇用関係などを利用して投票を威迫したのであれば、投稿の法的評価とは別に、強要した側の行為についても公職選挙法上の問題が生じる可能性があります。

公職選挙法225条は、選挙人などに暴行・威力を加える行為のほか、会社などに関する特殊な利害関係を利用して選挙人を威迫する行為を「選挙の自由妨害罪」として定めています。

そのため、経営者が「私は○○候補を応援しています」と表明することと、「○○候補に投票しなければ人事で不利益を与える」などと圧力をかけることは分けて考える必要があります。

正規の代理投票と不正投票の違いを示した図解。本人が候補者を指示し補助者が記載する代理投票と、本人の指示なしに候補者を選ぶなどの不正となり得る例を比較。

実際に投票を強要していた場合の刑罰は?

実際に会社での立場や雇用関係などを利用して、「○○候補に投票しなければ人事で不利益を与える」などと選挙人を威迫した場合、公職選挙法225条の選挙の自由妨害罪が成立する可能性があります。該当した場合の法定刑は、4年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。

候補者本人が経営者などの立場で社員に直接圧力をかけた場合は、候補者本人が選挙の自由妨害罪に問われる可能性があります。また、候補者本人が別の人物に指示し、その人物に社員への威迫行為をさせた場合も、具体的な事情によっては刑法上の教唆犯や共同正犯として、候補者本人が刑事責任を負う可能性があります。刑法61条では、人を教唆して犯罪を実行させた者には正犯と同じ刑を科すとされています。

一方、会社の役員や選挙運動の関係者などが候補者本人の指示を受けずに独自に強要した場合は、その行為をした本人や指示した人物が刑事責任を問われる可能性があります。候補者本人が指示したか分からない場合も、単にその候補者のために行われたというだけで、候補者本人が自動的に選挙の自由妨害罪に問われるわけではありません。候補者本人にも責任を問うには、指示や共謀などへの関与が具体的に認定される必要があります。

なお、当選した候補者本人が、その選挙に関して公職選挙法251条の対象となる選挙犯罪で刑に処せられた場合には、当選が無効となります。

「老人ホームで職員が勝手に投票した」と投稿した場合

老人ホームや病院などで職員が投票用紙の記入に関わっているのを見て、「職員が勝手に投票している」と考える人もいるかもしれません。

しかし、本人が自分で候補者名などを書くことができない場合には、法律上の「代理投票」という制度があります。

公職選挙法48条では、心身の故障その他の事由により自書できない選挙人が代理投票を申請できると定めています。代理投票では、投票事務に従事する者から補助者2人が選ばれ、1人が本人の指示した候補者名などを記載し、もう1人が立ち会います。

また、都道府県の選挙管理委員会が指定した病院や老人ホームなどでは、施設内で不在者投票を行える場合があります。施設の長が不在者投票管理者となり、その管理の下で投票する仕組みです。このような施設での不在者投票でも、自分で候補者名などを書くことができない場合には、本人の意思に基づいて代理投票を行うことがあります。

もちろん、本人が候補者を指示していないのに職員が勝手に候補者を選んだり、本人の意思と違う内容を書いたりすることは、正規の代理投票とは別の話です。

そのような不正が本当に行われているなら重大な問題ですが、SNSで「○○施設が票を偽造した」と公表することも重大な告発です。映像の一部分や伝聞だけで断定せず、まず選挙管理委員会や警察などに情報提供することも検討した方がよいでしょう。

候補者への応援表明と投票の強要・威迫の違いを示した図解。候補者を応援すると表明することと、雇用関係などを利用して投票先を強制する行為を比較。

実際に職員が勝手に投票していた場合の刑罰は?

老人ホームなどで行われる不在者投票で、代理投票の補助者などが本人の指示した候補者とは別の候補者名を記載した場合には、公職選挙法237条の2の「代理投票等における記載義務違反」が成立する可能性があります。法定刑は2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。

また、本人の意思とは関係なく投票そのものを作り出したり、投票数を増やしたりした場合には、公職選挙法237条3項の「投票偽造・増減罪」が問題になります。投票を偽造したり、その数を増減した者は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。さらに、投票管理者や選挙管理委員会の職員など一定の選挙事務関係者が投票を偽造・増減した場合は、5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金と、より重く処罰されます。指定施設で行われる不在者投票についても、公職選挙法255条により不在者投票管理者などを投票管理者等とみなして罰則が適用されます。

候補者本人が職員に不正な投票を指示し、実際に職員がその指示に従って犯罪を実行した場合には、候補者本人についても、関与の仕方によって共同正犯や教唆犯として刑事責任を問われる可能性があります。刑法61条では、人を教唆して犯罪を実行させた者には、原則として正犯と同じ刑を科すとされています。

一方、候補者本人が指示したか分からない場合や、施設関係者・選挙運動関係者など別の人物が独自に指示した場合には、不正投票が候補者に有利な内容だったというだけで、候補者本人が自動的に刑事責任を負うわけではありません。実際に指示した人物は、事情によって教唆犯や共同正犯として責任を問われる可能性がありますが、候補者本人の責任を問うには、指示や共謀など具体的な関与が認められる必要があります。

また、施設職員が誰からも指示されず、自分の判断だけで勝手に候補者名を書いた場合には、その行為の態様に応じて、代理投票等における記載義務違反や投票偽造・増減罪などが問題になる可能性があります。この場合も、候補者本人がその行為を知らず、指示や共謀をしていなければ、不正投票がその候補者のために行われたという理由だけで候補者本人まで処罰されるわけではありません。

なお、当選した候補者本人が、その選挙に関してこうした選挙犯罪を犯し、刑に処せられた場合には、公職選挙法251条により当選が無効となります。

選挙についてSNSに投稿するときの注意点

選挙に関する批判や疑問そのものが禁止されているわけではありません。むしろ、政策や候補者について議論することは民主主義にとって重要です。

ただし、「私は怪しいと思う」という評価と、「○○候補が犯罪をした」という具体的な事実の告発は同じではありません。

SNSに投稿する前には、何を自分で確認したのか、何が推測なのかを分けることが大切です。切り抜き動画や匿名アカウントの投稿だけを根拠に犯罪行為を断定するのは避け、選挙管理委員会、捜査機関、裁判記録など確認できる一次情報があるかを確かめましょう。

また、2026年7月には選挙とインターネット利用に関する公職選挙法等の改正法が成立しました。2027年3月1日からは、選挙に関してインターネット等を利用する人について、候補者に関する虚偽の事項や歪曲した事実を公にして選挙の公正を害することがないようにする旨の規定が施行される予定です。

この新しい規定自体には罰則は設けられていません。国会審議でも、選挙の公正を害さないよう求める訓示的な規定であり、この規定について罰則を設けないことが説明されています。なお、虚偽事項公表罪など既存の罰則に該当する場合は別です。

選挙の手続や制度について疑問がある場合は、市区町村や都道府県の選挙管理委員会に確認できます。また、不正投票や投票の強要など犯罪に当たる可能性のある行為について相談したい場合は、最寄りの警察署や警察相談専用電話「#9110」を利用する方法もあります。緊急の事件・事故の場合は110番です。

まとめ

SNSで「不正選挙だった」と投稿しただけで、直ちに犯罪になるわけではありません。

重要なのは、その投稿が選挙への意見や評価にとどまるのか、それとも「○○候補が買収した」「職員が票を偽造した」といった具体的な事実を公表しているのかという点です。

特定候補者について虚偽の不正情報を流した場合、名誉毀損罪が問題になる可能性があります。さらに、当選させない目的などの要件を満たせば、公職選挙法の虚偽事項公表罪が問題になる可能性があります。リポストや「~らしい」という表現でも、内容や拡散の仕方によって判断は変わります。

選挙への疑問を述べることと、十分な裏付けのない犯罪行為を断定することは別です。重大な不正を疑う情報を得たときは、SNSで断定的に拡散する前に、一次情報を確認し、必要に応じて選挙管理委員会や警察など適切な機関への相談を検討しましょう。

法律関連記事の注意書き
本記事は、法令や公的機関の情報を参考に作成しており、作成過程の一部で生成AIを補助的に使用しています。
記事の内容は一般的な情報の提供を目的としたものであり、個別の事情によって法律上の判断が異なる場合があります。
具体的なトラブルについては、弁護士や関係する公的機関などへご相談ください。

引用・参考資料

目次