キッチンでは収納場所が足りず、電子レンジの上にラップや食器、スマートフォンなどを置きたくなることがあります。天面が平らな機種なら、「棚のように使っても問題ないのでは?」と思うかもしれません。
しかし、電子レンジの上は基本的に収納場所として使わない方が安全です。熱による置いた物への影響や、放熱、落下など、複数の点に注意する必要があります。
問題は本体への影響だけではありません。置いた物の劣化、無線通信への干渉、地震時の落下なども考える必要があります。
電子レンジの上には原則として物を置かない
電子レンジの天面が平らでも、収納棚として設計されているとは限りません。トースターや炊飯器など、別のキッチン家電を直接載せる場合も同様です。
JEMAは、本体の上に物を置くと加熱されて焦げたり変形したりするおそれがあるとしています。さらに、電子レンジは側面や後面から放熱しているため、周囲との間に隙間を取ることも必要です。必要な空間は機種によって異なるため、具体的な距離は使用している製品の取扱説明書を確認しましょう。
特にオーブンやグリル機能を搭載した機種では、調理方法によって本体周辺が熱くなることがあります。「レンジ機能しか使わないから大丈夫」と決めつけず、指定された設置方法に従うことが大切です。
上に物を置くと電子レンジにどんな影響がある?
特に注意したいのが、吸排気や放熱に必要な空間をふさぐ置き方です。布や袋などで吸排気口や必要な空間をふさぐのは避けましょう。
吸排気口の位置は機種によって異なるため、天面付近も含め、取扱説明書で指定された空間を確保することが大切です。
また、天面に直接置いた物は熱の影響を受けることがあります。プラスチック類や紙・布類のほか、倒れると本体にかかる可能性がある液体入りの容器も、電子レンジの上には置かない方が安全です。

重い物と軽い物で危険性は変わる?
重い物と軽い物ではリスクが少し変わりますが、「軽ければ置いてよい」というわけではありません。
重い物は特に避ける
鍋、鉄板、小型家電など重量のある物を載せるのは避けましょう。
電子レンジの天面について、「○kgまでなら安全」と一律に判断することはできません。取扱説明書で物を載せることが認められていないなら、天面を耐荷重のある棚として扱うべきではありません。
さらに、重い物は地震で落下した際の危険が大きくなります。総務省消防庁も、重い物を低い位置に置いて重心を下げることを基本としており、高い位置から重い物が落ちる危険性にも注意を促しています。
電子レンジが胸や顔の高さにある家庭では、上に載せた鍋や家電が落ちれば大きなけがにつながる可能性があります。
軽い物にも熱や落下のリスクがある
ラップ、パンの袋、キッチンペーパー、布巾、レシピ本、空の保存容器などは、本体にかかる重量こそ小さくなります。
しかし、熱による変形や焦げ、通気を妨げる可能性は残ります。軽い物でも、振動や地震によって位置がずれたり、床へ落ちたりする可能性があります。
つまり、判断基準は「重いか軽いか」だけではありません。JEMAが本体の上に物を置かないよう案内していることを踏まえれば、軽い物も常設しない方が安全です。
スマートフォンやワイヤレスイヤホンを置くのは?
スマートフォン、ワイヤレスイヤホン、モバイルバッテリーなどの電子機器も、電子レンジの上を定位置にするのはおすすめできません。
注意したいのは、「電子レンジの上に置くだけでデータが消える」「すぐ壊れる」という話ではないことです。主に考えるべきなのは、無線通信への干渉と熱の影響です。
無線通信が不安定になる可能性がある
電子レンジは、無線通信に影響を与えることがあります。
情報通信研究機構(NICT)が公開している無線通信のトラブル事例集にも、「電子レンジから発生するノイズによる干渉」が挙げられています。またJEMAは、テレビ、ラジオ、無線LANなどの無線機器やアンテナ線を電子レンジから4m以上離すよう案内し、雑音、映像の乱れ、通信エラーの原因になる場合があるとしています。
電子レンジによる干渉で特に注意したいのは、2.4GHz帯を使う無線通信です。そのため、Bluetoothや2.4GHz帯のWi-Fiを電子レンジの近くで使用すると、電子レンジの動作中に通信が不安定になる可能性があります。
ただし、すべての無線通信が同じ影響を受けるという意味ではありません。また、電子レンジの上にスマートフォンを置いたという理由だけで、保存データが消去されると考える必要もありません。
バッテリーを熱源の近くに置かない
スマートフォン、ワイヤレスイヤホン、モバイルバッテリーなどには、リチウムイオン電池が使われているものがあります。
総務省消防庁は、リチウムイオン電池を搭載した製品について、高温になる場所を避けるよう注意喚起しています。高温環境では異常反応が進みやすいためです。
電子レンジの天面が必ず危険な高温になるという意味ではありません。ただし、JEMAは本体の上に置いた物が加熱されるおそれを挙げているため、電子レンジの上をスマートフォンなどの保管場所や充電場所として使うのは避けた方がよいでしょう。
スマートフォンやイヤホンは、電子レンジから離れた安定した場所に置きましょう。
地震では「上の物」だけでなく電子レンジ本体も危険
地震対策では、電子レンジ上の収納物だけでなく、本体の転倒・落下にも注意が必要です。

総務省消防庁は、地震では電子レンジが大きく移動したり飛び出したりする事例があるとして、置き台に載せて使う電子レンジなどは台と本体を適切に連結する必要があると案内しています。JEMAも、電子レンジの転倒・落下防止処置を推奨しています。
上に鍋や食器などを載せていると落下物も増えるため、特に高い位置では上部を収納スペースとして使わないようにしましょう。
電子レンジの上に物を置くと消費電力は増える?
電子レンジの上に物を置いたこと自体で、通常の加熱に必要な電力が直接増えるわけではありません。そのため、「上に物を置かないと節電になる」という性質のものではありません。
ただし、安全な運転のためにはメーカーが指定した放熱スペースを確保することが重要です。通気や放熱を妨げるような置き方は避けましょう。
電力面でより注意したいのはコンセントです。JEMAは、15A以上・交流100Vの専用コンセントを使用し、同じコンセントから他の器具を同時使用しないこと、タコ足配線やテーブルタップを使わないことを案内しています。
収納を増やしたいなら電子レンジラックを利用する
電子レンジの上の空間を活用したい場合は、天面へ直接物を載せるのではなく、電子レンジをまたぐタイプのラックなどを利用する方法があります。
この場合も、ラックの棚板や脚が電子レンジの吸排気口をふさいだり、メーカー指定の離隔距離を狭めたりしないことが条件です。また、ラック自体の耐荷重や転倒防止にも注意してください。

なお、電子レンジを冷蔵庫の上に置きたい場合は、冷蔵庫側の設置条件も確認する必要があります。 電子レンジを置ける冷蔵庫の条件や注意点については、「冷蔵庫の上に物を置いても大丈夫?故障・地震・電気代への影響を解説」で詳しく解説しています。
まとめ
電子レンジの上には、原則として物を置かない方が安全です。JEMAも、本体の上に置いた物が加熱されて焦げたり変形したりするおそれがあるとして、物を置かないよう案内しています。
重い物は地震時の落下による危険が大きく、軽い物でも熱、変形、通気の妨げ、落下といったリスクがあります。そのため、「軽い物なら置きっぱなしでも大丈夫」とは考えない方がよいでしょう。
スマートフォンやワイヤレスイヤホンなどについても、電子レンジによる無線通信への干渉や、バッテリーへの熱の影響を考えれば、別の場所に置くのがおすすめです。ただし、「電子レンジの上に置いただけでデータが消える」というような過度な心配は必要ありません。
また、上に物を置くこと自体が消費電力を増やすわけではありません。収納場所が必要なら、天面を棚代わりにするのではなく、必要な放熱スペースを確保できるラックなどを利用しましょう。
最後は使用している電子レンジの取扱説明書を確認し、その機種に指定された設置条件を守ることが最も確実です。
引用・参考資料
- 一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)「安全/正しい使い方」
https://www.jema-net.or.jp/living/renji/safety.html - 国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)「製造現場における無線通信トラブル対策事例集」
https://www2.nict.go.jp/wireless/ffpj-case.html - 国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)「工場向けワイヤレスIoT講習会 座学講習テキスト」
https://www2.nict.go.jp/wireless/assets/ac/wirelessiot-text_v1.2.pdf - 総務省消防庁「リチウムイオン電池総合対策ポータルサイト|使うとき」
https://www.fdma.go.jp/relocation/lithium-ion/using/ - 総務省消防庁「地震による家具の転倒を防ぐには|冷蔵庫やピアノもそのままでは危ないよ」
https://www.fdma.go.jp/publication/database/kagu/post6.html - 総務省消防庁「地震による家具の転倒を防ぐには|重い物は低いところへ-当り前のことも忘れずにね」
https://www.fdma.go.jp/publication/database/kagu/post8.html

