SNSで資格を盛るのは犯罪?簿記1級・調理師・医師の違いを比較

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SNSのプロフィールをよく見せるため、実際には持っていない資格を「持っています」と書いたら犯罪になるのでしょうか。

たとえば「日商簿記1級を持っている」「調理師です」「医師です」という3つのウソは、どれも資格を偽っている点では同じように見えます。

しかし、法律上の扱いは同じではありません。

資格の中には、法律によってその名称を使える人が限定されているものがあります。また、医師のように、名称だけでなく資格がなければ特定の業務を行えないものもあります。

この記事では、日商簿記1級・調理師・医師を例に、SNSで資格を盛った場合にどのような違いがあるのかを解説します。

目次

SNSで資格を盛ると犯罪になる?

結論からいうと、資格を持っているとウソをついただけで、すべて同じ犯罪になるわけではありません。

まず確認したいのが、その資格について「資格を持たない人が名称を使うこと」を法律が禁止しているかどうかです。

今回取り上げる3つを簡単に整理すると、次のようになります。

SNSでの発言主なポイント
「日商簿記1級を持っています」それだけで直ちに犯罪になるとは限らない
「調理師です」無資格者による名称使用が調理師法で禁止されている
「医師です」無資格者による名称使用が医師法で禁止されている
「医師です」と名乗って医業を行う名称使用に加えて無資格医業も問題になる

「国家資格」「民間の検定」という区分だけでは判断できず、資格ごとの法律を確認する必要があります。

名称を名乗ることと仕事をすることは別

資格について考えるときは、「その名称を名乗れるか」と「その資格が必要な仕事をできるか」を分けると分かりやすくなります。

たとえば調理師法は、調理師でない人が「調理師」または紛らわしい名称を使うことを禁止しています。一方、無資格者が料理を作る行為そのものを一律に禁止しているわけではありません。

これに対して医師法は、無資格者が「医師」などの名称を使うことに加えて、「医師でなければ、医業をなしてはならない」と定めています。

資格によって、名称の使用や業務について法律で規制されている範囲が異なります。

無資格で名乗ることが法律で禁止されている主な資格

調理師や医師以外にも、資格を持っていない人がその名称を使うことを法律で禁止している資格があります。

主な例を挙げると、次のとおりです。

資格・名称主な根拠法無資格者への規制
医師医師法「医師」または紛らわしい名称の使用を禁止
歯科医師歯科医師法「歯科医師」または紛らわしい名称の使用を禁止
薬剤師薬剤師法「薬剤師」または紛らわしい名称の使用を禁止
調理師調理師法「調理師」または紛らわしい名称の使用を禁止
保健師・助産師・看護師・准看護師保健師助産師看護師法各名称または紛らわしい名称の使用を禁止
弁護士弁護士法弁護士でない者による「弁護士」などの表示・記載を禁止
税理士税理士法「税理士」や類似する名称の使用を禁止
司法書士司法書士法「司法書士」または紛らわしい名称の使用を禁止
行政書士行政書士法「行政書士」または紛らわしい名称の使用を禁止
社会保険労務士社会保険労務士法「社会保険労務士」など類似名称の使用を禁止
社会福祉士・介護福祉士社会福祉士及び介護福祉士法資格を持たない者による各名称の使用を禁止

このように、無資格者による名称の使用を法律で禁止している資格は複数あります。ただし、規制される名称や行為、罰則は資格ごとに異なります。「国家資格だからすべて名乗るだけで犯罪になる」と一括りにはできません。

この記事では、この違いが分かりやすい日商簿記1級・調理師・医師の3つを詳しく見ていきます。

「勉強中」「受験予定」と書く場合は?

「簿記1級勉強中」のように、実際の状況をそのまま書くことは、資格を取得していると名乗ることとは異なります。

一方、「合格見込み」などの曖昧な表現は、書き方によって資格をすでに取得していると誤解される可能性があります。まだ取得していない場合は、「勉強中」「受験予定」など、現在の状況が分かる表現にするとよいでしょう。

「日商簿記1級を持っています」とウソをついた場合

日商簿記は日本商工会議所が実施している検定です。

日商簿記1級では、商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算について高度な知識が求められ、日本商工会議所は、企業会計に関する法規を踏まえて経営管理や経営分析を行うために求められるレベルと説明しています。

では、実際には取得していない人がSNSに、「日商簿記1級取得済みです」と書いたら犯罪なのでしょうか。

日商簿記1級については、調理師法や医師法のように、無資格者による名称使用を直接禁止する資格固有の法律はありません。

そのため、SNSのプロフィールにウソを書いたという事情だけで、直ちに法律違反になるとは通常考えにくいでしょう。

ただし、資格を偽っても何の問題もないという意味ではありません。

たとえば、「日商簿記1級保有者が教える有料コンサル」などと宣伝し、資格があると信じた相手から料金を受け取った場合は、単にSNSで資格を盛る場合とは事情が異なります。

ウソの資格を利用して金銭を得た場合については、後ほど詳しく解説します。

無資格なのに「調理師です」と名乗った場合

調理師の場合は、日商簿記1級とは大きく異なります。

調理師法第8条では、調理師でなければ「調理師」またはこれに紛らわしい名称を使ってはならないと定めています。

さらに第11条では、第8条に違反した者について30万円以下の罰金と定めています。

したがって、調理師免許を持っていない人がSNSプロフィールに、

「本職は調理師です」
「調理師として10年働いています」

などと表示した場合、単なる経歴上のウソではなく、調理師法上の名称使用制限に違反する可能性があります。

一方、「飲食店で調理の仕事をしています」と書くこととは別です。

調理師法第8条の2では、一定の施設や営業について、調理師を「置くように努めなければならない」とされています。つまり、医師のように、料理を作る仕事そのものを調理師だけに限定しているわけではありません。

「料理を仕事にしている人」と「法律上の調理師」は同じとは限らない点に注意しましょう。

無資格なのに「医師です」と名乗った場合

医師については、さらに強い規制があります。

医師法第18条では、医師でなければ「医師」またはこれに紛らわしい名称を使ってはならないと定めています。

この規定に違反すると、医師法第33条の3により50万円以下の罰金の対象となります。

そのため、医師免許がない人がSNS上で、

「現役医師です」
「医師として医療情報を発信しています」

などと名乗れば、実際に患者を診察していなくても、名称使用自体が問題になる可能性があります。

実際に医業を行うとさらに問題が大きくなる

医師法第17条では「医師でなければ、医業をなしてはならない」と規定されています。

厚生労働省は「医業」について、医師の医学的判断や技術がなければ人体に危害を及ぼす、またはそのおそれがある行為を、反復継続する意思をもって行うことと説明しています。個々の行為が医行為に当たるかどうかは、具体的な内容によって判断されます。

無資格で医業を行った場合は、医師法第31条により3年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。

さらに、無資格で医業を行った人が「医師」または類似した名称も使っていた場合は、同条第2項により3年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。

つまり、「SNSで医師と名乗る」ことと、「無資格で医業を行う」ことは別の問題であり、後者まで行えばより重い罰則の対象になり得ます。

SNSで無資格のまま医師と名乗る場合と、実際に無資格で医業を行う場合を比較したイラスト

軽犯罪法が問題になる資格もある

資格や肩書の詐称では、内容によっては、その資格を定めた法律だけでなく軽犯罪法が問題になることもあります。

たとえば、学校教育法では、学士・修士・博士などの学位が定められています。軽犯罪法第1条第15号は「学位」の詐称も対象としています。

軽犯罪法第1条第15号では、「官公職、位階勲等、学位その他法令により定められた称号」などを詐称する行為を対象としています。軽犯罪法第1条に該当する行為には、拘留または科料が定められています。

ただし、すべての資格や検定が対象になるわけではなく、「資格をウソで名乗ったらすべて軽犯罪法違反」とは限りません。

今回取り上げた調理師や医師については、それぞれ調理師法・医師法に明確な名称使用制限と罰則が設けられているため、まず個別の法律を確認することが重要です。

他人の資格証を自分のものとして見せたら?

資格について文字だけでウソをつくのではなく、他人の資格証を自分のものとしてSNSに掲載するケースも考えられます。

たとえば、家族が本当に調理師免許を持っており、その免許証の氏名部分を黒塗りにして、

「身バレ防止のため名前は隠しますが、私の調理師免許です」

と投稿するケースです。

この場合、元の免許証自体は本物で、氏名などを書き換えているわけではありません。

そのため、他人の本物の資格証を見せたという事情だけで、直ちに「資格証を偽造した」と判断することはできません。

もっとも、自分の資格証であるかのように見せながら「調理師です」「医師です」と名乗れば、調理師法や医師法による名称使用制限が問題になる可能性があります。

さらに、それを信用させる材料として使って金銭を受け取った場合は、詐欺罪など別の問題も検討する必要があります。

他人の資格証を名前を隠して自分のものとして見せる場合と、資格証の氏名を加工する場合の違いを示したイラスト

資格証の名前を書き換えたら?

他人の資格証をそのまま見せる場合よりも、資格証の氏名を自分の名前に書き換える行為は問題が大きくなります。

刑法には、公文書や私文書などの偽造・変造と、その偽造・変造した文書等を行使する行為について罰則があります。

また、現在の刑法では、一定の「電磁的記録文書等」についても偽造・変造に関する規定が設けられています。

資格証はすべて同じ性質ではなく、行政機関が交付する免許証と、検定団体が発行する合格証書では、問題となる規定が異なる場合があります。

また、紙の免許証そのものを書き換えた場合と、SNSに投稿するため撮影した画像だけを加工した場合についても、常に同じ犯罪が成立するとは限りません。

そのため、「資格証の画像を加工した=必ず公文書偽造罪」などと一律に判断することはできません。

具体的には、資格証の種類や加工方法、何のために作成したのか、どのように使用したのかなどによって判断されます。

ウソの資格を利用してお金を得たら詐欺になる?

資格のウソを利用して金銭を得た場合は、その資格に関する法律だけでなく、詐欺罪も問題になる可能性があります。

刑法第246条では、人を欺いて財物を交付させた場合などについて、10年以下の拘禁刑を定めています。

たとえば、「日商簿記1級保有者による有料コンサル」「現役医師による有料の個別相談」などと宣伝し、実際には資格を持っていないことを隠して料金を受け取ったケースです。

ただし、資格を偽った状態で料金を受け取れば、自動的に詐欺罪になるわけではありません。

資格についてどのような説明をしたのか、その資格が相手の契約・支払いの判断にどの程度影響したのかなど、具体的な事情によって判断されます。

SNSだけでなく、仕事を受注するためのプロフィールで資格を偽り、その資格を信用した相手から報酬を得た場合も、具体的な事情によっては詐欺罪が問題になる可能性があります。

簿記1級・調理師・医師の違いを比較

最後に、今回の3つを整理します。

資格・検定無資格で名乗る無資格で仕事をする
日商簿記1級それだけで直ちに犯罪になるとは限らない日商簿記1級そのものに、取得者だけが行える独占業務はない
調理師調理師法で名称使用を禁止調理そのものを調理師だけに限定しているわけではない
医師医師法で名称使用を禁止医師でなければ医業を行えない

同じ「資格を盛る」という行為でも、資格の性質によって法的なリスクは大きく異なります。

まとめ

SNSで資格を盛ったときの法的な扱いは、資格の種類や、ウソをどのように利用したかによって異なります。

SNSで資格を記載するときは、単なる肩書だと思わず、実際に取得している資格を正確に掲載することが大切です。

特に、有資格者であることを信用材料として仕事を受注したり、金銭を得たりする場合は、資格に関する法律だけでなく、詐欺など別の問題が生じる可能性もあります。

「SNSのプロフィールを少し盛っただけ」と考えず、資格や経歴は正確に発信するようにしましょう。

法律関連記事の注意書き
本記事は、法令や公的機関の情報を参考に作成しており、作成過程の一部で生成AIを補助的に使用しています。
記事の内容は一般的な情報の提供を目的としたものであり、個別の事情によって法律上の判断が異なる場合があります。
具体的なトラブルについては、弁護士や関係する公的機関などへご相談ください。

引用・参考資料

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