SNSでは、「年収3000万円」「資産1億円」など、高収入・高資産をアピールする投稿を見かけます。中には、銀行口座の預金残高や証券口座の評価額を“証拠”として載せるケースもあります。
では、実際の年収が500万円なのに「年収3000万円」と投稿した場合、それだけで犯罪になるのでしょうか。さらに、実際の口座残高や評価額が100万円程度なのに、画面を加工して「資産1億円」のように見せた場合はどうでしょう。
結論からいうと、年収を盛るだけの場合と、銀行・証券口座の画面を加工して本物として示す場合では、法的な問題が異なります。後者では、文書等の偽造・変造や「行使」が問題になる可能性があります。
2025年6月12日からは、文書として画面に表示して利用される一定の電子データ(電磁的記録文書等)についても、文書偽造罪などの対象になり得るよう刑法が改正されました。法務省の犯罪白書でも、この罰則整備は2025年6月12日に施行されたとされています。
この記事では、「年収を盛る」「自作画像を作る」「実際の口座画面を加工する」「SNSで本物として見せる」「金銭や利益を得る」という段階ごとに違いを整理します。
SNSで「加工した口座残高」を見せると犯罪になる?
銀行口座や証券口座の画面を加工し、本物の口座情報であるかのようにSNSへ投稿した場合、犯罪になる可能性があります。
ただし、口座残高を偽った投稿をしたからといって、必ず犯罪が成立するわけではありません。
例えば、実際には銀行預金が100万円なのに、銀行アプリの画面を加工して「残高1億円」にしたり、証券口座の評価額200万円を「2000万円」に書き換えたりするケースです。
口座画面の加工は文書偽造罪などが問題になる可能性がある
2025年6月12日に施行された改正刑法では、「電磁的記録文書等」が文書偽造罪などの対象に加えられました。
電磁的記録文書等とは、文書や図画として表示され、行使されることとなる電磁的記録を指します。国会審議でも、どのような電子データがこれに当たるかは、個別の事実関係や証拠関係を踏まえて判断されると説明されています。
そのため、銀行や証券会社が表示した本物の口座情報であるかのように残高や評価額を書き換え、他人に本物として見せる目的で利用する場合には、電磁的記録文書等の偽造・変造が問題になる可能性があります。
ただし、銀行アプリや証券口座のスクリーンショットを加工すれば、必ず犯罪になるという意味ではありません。
そのデータが刑法上の電磁的記録文書等に当たるのか、銀行や証券会社が作成した本物の情報であるかのような外観を備えているのか、残高や評価額を証明するものとして使われる性質があるのか、行使する目的があったのかなど、具体的な事情によって評価は変わります。
国会審議では、偽造された電子データが画面に表示された際、一般の人が真正なものだと誤信し得る程度に達しているかという考え方も示されています。
なお、この記事では口座画面の加工について説明していますが、もともと存在する本物の口座画面の数字などを書き換えるケースでは、刑法上の「変造」が問題になる場合もあります。
SNSに投稿しただけで必ず犯罪になるわけではない
では、加工した口座画面を「これが現在の資産です」などとSNSへ投稿した場合はどうでしょう。
刑法では、偽造・変造した文書等を本物として「行使」することも処罰対象になり得ます。
最高裁は、偽造公文書の「行使」について、文書を真正に成立したものとして他人に交付・提示などし、その内容を認識させ、または認識できる状態に置くことが必要だとしています。
この判例では、偽造した運転免許証を持って自動車を運転していただけでは「行使」に当たらないと判断されました。ただし、これは紙の偽造運転免許証を扱った1969年の判例であり、銀行・証券口座の加工画像をSNSへ投稿したケースを直接判断したものではありません。
また、電磁的記録文書等に関する規定が新設された際、衆議院法務委員会の附帯決議では、虚偽の名義や内容の電子データによる他人の権利・利益の侵害には厳格に対処する一方、SNSへの投稿などが過度に広く処罰され、表現の自由が不当に抑制されないよう留意することも求められています。
したがって、「加工した口座画面をSNSに投稿したら必ず犯罪になる」と一律にはいえません。
一方で、「これが現在の銀行残高です」「証券口座に5000万円あります」などと説明し、銀行や証券会社が表示した本物の情報として他人に見せるほど、「行使」が問題になる可能性は高まります。
単に端末内で加工画像を作って保存している場合とは、分けて考える必要があります。
SNSで年収を盛るだけなら犯罪になる?
では、実際の年収が500万円の人がSNSで、「年収3000万円です」と投稿した場合はどうでしょう。
刑法には、SNSで事実と違うことを書いたこと自体を一律に処罰する規定があるわけではありません。
そのため、そのウソを利用して金銭をだまし取るなど、別の犯罪の要件に当たる事情がなければ、年収を高く書いただけで直ちに犯罪になるとは通常考えにくいでしょう。
例えば、「年収3000万円」と書いて見栄を張ったものの、それを利用してお金を借りたり、出資を受けたりしていないケースです。
ただし、「犯罪にならない可能性が高い=何をしても問題ない」という意味ではありません。ウソの使い方によっては、後述する詐欺など別の法律問題につながる可能性があります。
自作の資産画像と実際の口座画面の加工は同じではない
文章ではなく画像を使った場合でも、その作り方によって事情は異なります。例えば、自分で白い背景に「総資産 50,000,000円」と書いただけの画像を作ったとします。銀行・証券会社の名称やロゴ、画面デザインなどを使わず、単なる自己申告の画像にすぎないのであれば、銀行や証券会社が作成した口座情報を装った場合とは区別して考える必要があります。
一方、実際の銀行アプリに「普通預金 1,230,000円」と表示されている画面を使い、数字だけを「普通預金 123,000,000円」に書き換え、銀行名やロゴ、UIなどを残した場合は事情が変わります。
証券口座でも同様です。実際には株式や投資信託などを合わせて200万円分しか保有していないのに、証券会社の画面を加工して「評価額20,000,000円」と見せるケースが考えられます。こうした画像は、見る人が「銀行や証券会社が実際に表示した情報だ」と受け取る可能性があります。

重要なのは、数字がウソかどうかだけでなく、第三者である銀行や証券会社が作成・表示した本物の口座情報であるかのように見せているかという点です。
偽の口座画面を使ってお金を借りた場合は?
法的リスクがさらに大きくなるのが、加工した口座画面を使って金銭や財産上の利益を得る場合です。
例えば、本当は銀行預金が100万円しかないのに1億円あるように加工し、
「これだけ預金があるので100万円を貸しても必ず返せます」
と相手に示したとします。
その画像を本物だと信じた相手が、それを重要な理由として100万円を貸した場合には、文書等の偽造・変造や行使に加えて、詐欺罪が問題になる可能性があります。
証券口座でも、本当はほとんど金融資産を持っていないのに、株式などを数千万円保有しているように画面を加工し、それを信用させて融資や出資を受けるケースが考えられます。

刑法246条は、人を欺いて財物を交付させた場合や、同様の方法によって財産上の不法な利益を得た場合などを詐欺罪として処罰しています。
つまり、単に「ウソをついた」というだけではありません。
ウソや偽の画像によって相手を欺き、相手がそれを信用し、その結果として金銭などを交付したという関係があるかが重要になります。
どこから法的リスクが高くなる?
今回のケースを段階別に整理すると、次のようになります。
| 行為 | 基本的な考え方 |
|---|---|
| SNSで「年収3000万円」と文章だけでウソを書く | それだけで直ちに犯罪になるとは通常考えにくい |
| 「総資産5000万円」などの自作画像を載せる | 銀行・証券会社が作成した情報を装っていなければ、実際の口座画面の加工とは区別される |
| 銀行・証券口座の残高や評価額を書き換える | 電磁的記録文書等の偽造・変造が問題になる可能性がある |
| 加工画像を本物の口座情報としてSNSで公開する | 「行使」が問題になる可能性があるが、投稿だけで必ず犯罪になるわけではない |
| 加工画像を信用させて金銭・利益を得る | 偽造・変造や行使に加え、詐欺罪が問題になる可能性が高まる |
境界線は、単純に「ウソをついたかどうか」ではありません。
自分の言葉でウソを言う段階から、銀行・証券会社など第三者が表示したように見える“証拠”を作り、それを本物として他人に示し、さらに金銭や利益を得る段階へ進むほど、法的な問題が大きくなっていきます。
まとめ
SNSで実際より高い年収を書いて見栄を張るだけであれば、通常は、それだけで直ちに犯罪になるとは限りません。
しかし、そのウソに信ぴょう性を持たせるため、銀行口座の預金残高や証券口座の評価額などを加工し、「銀行や証券会社が表示した本物の情報」のように見せると話は変わります。
2025年6月12日からは、文書として画面に表示して利用される一定の電子データ(電磁的記録文書等)も、文書偽造罪などの対象になり得るよう刑法が改正されました。さらに、加工した口座画面を本物として他人に示せば「行使」が問題になる可能性があり、それを信用させて金銭や財産上の利益を得れば、詐欺罪まで問題になり得ます。
ポイントは、
「ウソ」→「証拠らしい口座データを作る」→「本物として見せる」→「金銭や利益を得る」
という段階ごとに、法的な問題が変わることです。
「SNSでマウントしたかっただけ」「利益を得るつもりはなかった」という事情だけで、口座画面の加工や利用まで当然に問題がなくなるわけではありません。
なお、文書偽造罪などの成否は、画像やデータの外観、作成方法、利用方法、目的など、具体的な事情によって変わります。実際の事件について判断が必要な場合は、弁護士などの専門家に相談してください。
法律関連記事の注意書き
本記事は、法令や公的機関の情報を参考に作成しており、作成過程の一部で生成AIを補助的に使用しています。
記事の内容は一般的な情報の提供を目的としたものであり、個別の事情によって法律上の判断が異なる場合があります。
具体的なトラブルについては、弁護士や関係する公的機関などへご相談ください。
引用・参考資料
- e-Gov法令検索「刑法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045 - 衆議院「情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」
https://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_housei.nsf/html/housei/21720250523039.htm - 衆議院「第217回国会 法務委員会 第7号(令和7年4月1日)」
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000421720250401007.htm - 衆議院「第217回国会閣法第30号 附帯決議」
https://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_rchome.nsf/html/rchome/Futai/houmu410968CBA70652FA49258C770004FBBD.htm - 法務省「令和7年版 犯罪白書 第2編/第1章/1」
https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/72/nfm/n72_2_2_1_0_1.html - 裁判所「昭和44年6月18日 最高裁判所大法廷判決」
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/894/050894_hanrei.pdf

