アルバイトの日に突然熱が出たり、腹痛で動けなくなったりしたとき、店長に「休むなら自分で代わりを探して」と言われることがあります。
しかし、「可能なら代わりを探してほしい」と協力を求められることと、「代わりが見つからなければ休ませない」という扱いは同じではありません。
結論からいうと、病欠するときに代わりの人を必ず確保することは、原則としてアルバイト本人の法的義務ではありません。そのため、「代わりが見つからない=必ず出勤しなければならない」と考える必要はありません。
この記事では、代わりを探す義務や、見つからない場合の罰金・減給、代わりを探す時間の給料などを解説します。
バイトを休むとき、自分で代わりを探す義務はある?
「代わりを探して」とお願いするだけなら問題ない?
例えば、店長から「今日は休んでいいけれど、できそうなら○○さんに代われないか聞いてくれる?」と頼まれた場合です。
体調などに配慮したうえで、可能な範囲で協力を求めること自体が直ちに違法になるわけではありません。シフト交換のルールがある職場もあるでしょう。
ただし、「必ず自分で見つけろ」「誰も見つからなければ病気でも出勤しろ」となれば、単なる協力のお願いとは意味が変わります。
欠員が出たときに、誰を勤務させるのか、ほかの店舗から応援を呼ぶのかなど、人員配置を最終的に判断するのは事業者側です。
代わり探しへの協力を求めることと、欠員を埋める責任そのものをアルバイトに負わせることは別です。
代わりが見つからなければ休ませないと言われた場合は?
「代わりが見つからない」という理由だけで、代替要員を確保する責任がアルバイト本人に生じるわけではありません。
ただし、休んだ日が有休になるのか、会社独自の病気休暇になるのか、それとも通常の欠勤になるのかは別の問題です。勤務先の制度や状況によって扱いが異なります。
突然体調を崩した場合は、できるだけ早く勤務先へ連絡し、休みの扱いを確認しましょう。
就業規則や雇用契約書に「代わりを探すこと」と書かれていたら?
就業規則や雇用契約書に、「欠勤する場合は、可能な限り交代できる従業員を探すこと」などと書かれている場合もあります。
このような協力手続を定めること自体が、直ちに無効になるわけではありません。
ただし、それだけで「必ず代わりを確保しなければ休めない」という責任までアルバイト本人が負うわけではありません。
代わりを見つけられなかったら減給・罰金にできる?
「休んだので、その日の給料が出なかった」場合と、「代わりを見つけられなかったので、給料から3,000円引かれた」場合は別です。
欠勤した時間分の給料が出ないのは「減給」とは違う
例えば、時給1,200円で5時間働く予定の日に5時間すべて欠勤し、有休なども利用していなければ、6,000円が支払われないことがあります。
これは通常、懲戒として6,000円を減給されたという意味ではありません。働かなかった時間について賃金が発生しないことと、本来受け取れる賃金からペナルティーとして差し引くことは別だからです。
一方、「休んだから、別の日に働いた給料からさらに3,000円引く」となれば話が変わります。
「見つからなかったら3,000円」などの罰金は?
例えば、「当日欠勤したら5,000円」「代わりを見つけられなかったら3,000円」などと、あらかじめ金額を決めている場合です。
労働基準法第16条は、労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額をあらかじめ予定したりする契約を禁止しています。
そのため、「代わりが見つからなければ3,000円」などと、違約金をあらかじめ定める契約は禁止されています。
ただし、労働者が絶対に損害賠償責任を負わないという意味ではありません。労働者の故意や過失によって会社に実際の損害が生じ、その行為と損害との間に因果関係が認められる場合には、具体的な事情に応じて賠償責任が問題になることがあります。
その場合でも、会社が損害額を一方的に給料から差し引いてよいわけではありません。労働基準法第24条には賃金全額払いの原則があります。
懲戒として減給される場合は?
就業規則に減給の懲戒規定があっても、病欠しただけで当然に減給できるわけではありません。
無断欠勤や服務規律違反など、就業規則上の懲戒事由に該当し、処分に客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性がある場合には、懲戒として減給されることがあります。
ただし、懲戒を行うには、就業規則などに懲戒規定を定め、労働者に周知しておく必要があります。
さらに、労働契約法第15条では、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない懲戒は無効とされています。
減給の制裁には労働基準法第91条による上限もあります。1回の減給額は平均賃金1日分の半額までで、減給総額は一賃金支払期の賃金総額の10分の1までです。
つまり、代わりを見つけられなかったからといって、店長の判断だけで好きな金額を差し引けるわけではありません。

代わりを探している時間にも給料は発生する?
代わりを探している時間に給料が発生するかは、会社からの指示の有無や実際の状況によって異なります。
厚生労働省のガイドラインでは、使用者の指揮命令下に置かれている時間や、明示・黙示の指示によって業務に従事する時間は労働時間に当たるとされています。
会社から「5人に連絡して」と命じられた場合
「AさんからEさんまで全員にメッセージアプリで連絡して、返事を確認したら報告してください」と命じられた場合、会社の指示による作業と判断される可能性があります。
実態として使用者の指揮命令下にあれば、代わりを探す時間も労働時間になり得ます。
自宅から自分のスマートフォンを使ったという理由だけで、労働時間ではなくなるわけではありません。
10~20分程度の短時間でも、会社から具体的に指示された作業であれば、労働時間に当たる可能性があります。
自主的に探した場合は労働時間になる?
一方、「店長からは休んでいいと言われたが、迷惑をかけたくないので自分から友人に連絡した」という場合は事情が異なります。
会社から指示されず、本人が自主的に行っただけであれば、通常は会社の指揮命令下で行った業務とは判断されにくくなります。
ただし、「代わりを探さないと必ず叱られる」「誰に連絡したか毎回報告しなければならない」など、実質的に代わり探しを求められている場合には、黙示の指示があったと評価される可能性があります。

トラブルに備えて記録を残しておく
「代わりを探して」「5人に連絡して」などの指示がメッセージアプリなどで送られてきた場合は、メッセージのスクリーンショットを保存しておくとよいでしょう。
給与から金額を引かれた場合は、給与明細や就業規則の該当部分なども残しておくと、労働基準監督署や労働局などへ相談するときに経緯を説明しやすくなります。
「代わりを探しました」とウソをついたら?
たとえ本当に体調を崩していたとしても、「代わりを探した」とウソの報告をすれば別の問題が生じます。
本当に病気でも虚偽報告は別問題
実際に高熱があったとしても、「AさんとBさんに連絡しました」と言いながら、誰にも連絡していなければ報告内容は事実と異なります。
体調が悪くて連絡できないのであれば、「ほかの人へ連絡できる状態ではありません」と正直に伝えた方がトラブルを防ぎやすいでしょう。
ウソを理由に懲戒されることはある?
就業規則に虚偽報告などを懲戒事由とする規定があり、周知されている場合には、懲戒処分が問題になる可能性があります。
ただし、「一度ウソをついたら必ず減給」「ウソが発覚したら即日解雇」と機械的に決まるわけではありません。
懲戒には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められ、虚偽報告の内容や回数、会社への影響などによって判断が変わります。
まとめ
アルバイトが病欠するとき、代わり探しへの協力を求められることはあります。しかし、代わりの人を必ず確保することまで、原則としてアルバイト本人の責任になるわけではありません。
また、「代わりが見つからなければ3,000円」などと、違約金をあらかじめ定める契約は禁止されています。会社から具体的に代わり探しを指示された場合には、その時間が労働時間になる可能性があります。
実際に賃金控除や罰金などのトラブルになった場合は、メッセージや給与明細などの記録を残し、労働基準監督署や都道府県労働局などへ相談する方法があります。
法律関連記事の注意書き
本記事は、法令や公的機関の情報を参考に作成しており、作成過程の一部で生成AIを補助的に使用しています。
記事の内容は一般的な情報の提供を目的としており、個別の事情によって法律上の判断が異なる場合があります。
具体的なトラブルについては、労働基準監督署や都道府県労働局、弁護士などへご相談ください。
引用・参考資料
- e-Gov法令検索「労働基準法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049 - e-Gov法令検索「労働契約法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128 - 厚生労働省「アルバイトをする前に知っておきたいポイント」
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/parttime/ - 厚生労働省「就業規則で、記載が必須な事項はありますか?」
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/qa/roudousya/syuugyoukisoku/q4.html - 厚生労働省「不良品を出すごとに賠償金を賃金控除することは、労基法上許されますか?」
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/qa/roudousya/koyou/q6.html - 厚生労働省「病気療養のための休暇」
https://work-holiday.mhlw.go.jp/kyuukaseido/recuperation.html - 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/070614-2.html - 厚生労働省「アルバイト先でのトラブル」
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/study/roudousya_parttime.html

