モグラにフーセンガムは効く?「食べると死ぬ」説や農作物被害・法律を解説

家庭菜園のモグラとフーセンガムを描いた「モグラにフーセンガムは効く?」の記事サムネイル

庭や畑にモグラのトンネルや土の山ができたとき、「穴にフーセンガムを入れると退治できる」と聞いたことはないでしょうか。

よくある説明は、「甘い香りにつられてモグラがガムを食べる」「ガムを消化できずに死ぬ」というものです。しかし、フーセンガムは本当にモグラ対策として効果があるのでしょうか。

結論からいうと、フーセンガムは効果が確立されたモグラ対策とはいえません。海外の大学による園芸情報では、チューインガムを「効果のない対策」として挙げている例があり、試験でモグラがガムを無視したという報告もあります。

この記事では、フーセンガムが効くといわれる理由と実際のところ、モグラが農作物に与える被害、ほかの鳥獣との被害額の違いを解説します。最後に、家庭菜園や農地でモグラを捕獲・殺傷する場合の法律上の注意点も紹介します。

目次

モグラにフーセンガムは効く?

「食べると消化できず死ぬ」という説に確かな裏付けは見当たらない

フーセンガムをモグラの通り道へ入れる方法では、「フルーツ味などの甘い香りでモグラを誘い、食べさせる」「飲み込んだガムが消化できず、消化器官に詰まって死ぬ」などと説明されることがあります。

しかし、今回確認した範囲では、日本のモグラ類について、フーセンガムを食べさせることで駆除できると実証した公的な研究資料は確認できませんでした。

海外では、アイオワ州立大学がモグラ対策のページで、チューインガムを「効果のない対策」の一つとして挙げています。また、穀物やピーナツを使ったモグラ用毒餌についても、効果のない方法としています。

さらに、ワシントン州立大学のページには、限定的な試験ではあるものの、モグラがチューインガムを無視したという記載があります。海外のモグラを対象とした情報なので、そのまま日本のモグラに当てはめることはできませんが、「甘いガムなら好んで食べる」と考える根拠は弱いといえるでしょう。

日本のモグラも植物を主食にしていない

森林総合研究所の多摩森林科学園によると、アズマモグラの主食はミミズや昆虫の幼虫類です。また、「モグラが植物を食べることはありません」と説明しています。

つまり、ニンジンやジャガイモなどの植物を狙って食べる動物ではありません。普段の食性から考えても、フーセンガムを餌として積極的に食べることを前提にした駆除法には疑問が残ります。

「オレンジ味なら効く」「ブドウ味がよい」といった味の違いについても、今回確認した信頼性の高い資料では根拠を確認できませんでした。

「フーセンガムでモグラがいなくなった」という体験談は?

フーセンガムを置いた後にモグラの活動が見られなくなれば、「ガムが効いた」と考えたくなります。しかし、前後関係だけで効果を判断するのは難しいでしょう。

海外でも「Juicy Fruitなどのチューインガムをモグラのトンネルに入れる」という民間的な対策は知られています。ただし、大学の資料では科学的に効果が確認された方法とはされていません。

アイオワ州立大学によると、モグラが地表近くに作る採餌用のトンネルは一度しか使われないことがあります。一方、主要なトンネルは長期間使われる場合があります。

そのため、たまたま一時的なトンネルにガムを置き、その後モグラが別の場所で活動すれば、ガムによって追い払えたように見える可能性があります。

また、穴に入れたガムが見当たらなくなったとしても、それだけではモグラが食べたことを確認したことにはなりません。

体験談を否定する必要はありませんが、「ガムを置いた後に姿を見なくなった」ことと、「ガムそのものに再現性のある駆除効果がある」ことは分けて考える必要があります。

モグラはニンジンやジャガイモなどを食べる?

畑にモグラ塚やトンネルができると、ニンジンやダイコン、ジャガイモ、サツマイモなどを食べる害獣だと思われることがあります。

しかし、モグラによる農作物被害の中心は、「食べること」ではなく「掘ること」です。

モグラは農作物を食べるよりトンネルを掘って根を傷め、野ネズミは根菜を食害することを示す図

東京都の「野ネズミ・モグラの防除法」では、モグラは肉食性で農作物を直接食害せず、トンネルを掘ることで根が切れたり、苗が倒れたりする被害があると説明しています。

農研機構も、アズマモグラによる飼料作物への被害として「根辺の土壌が持ち上げられるための被害」を挙げています。

さらに東京都の資料では、モグラが作ったトンネルを野ネズミが通路として利用する場合があり、その被害が大きくなることもあるとしています。

そのため、畑にモグラのトンネルがあり、根菜にかじられた跡まで見つかった場合は、「モグラが食べた」と決めつけず、ネズミ類など別の動物による食害も考える必要があります。

モグラによる農作物被害額は年間699万円

農林水産省は、都道府県からの報告をもとに、野生鳥獣による農作物被害を集計しています。

令和6年度(2024年度)の訂正後の統計では、モグラによる全国の農作物被害額は699万円です。内訳は、野菜260万円、稲168万円、果樹127万円、いも類93万円、工芸作物29万円、飼料作物13万円などとなっています。

同じ年度のほかの鳥獣と比べると、次のようになります。

鳥獣農作物被害額
イノシシ44億5,593万円
ヒヨドリ8億638万円
スズメ1億6,156万円
モグラ699万円

これらは農林水産省が2026年2月に一部訂正した後の数値です。

野生鳥獣全体の農作物被害額は約188億円です。モグラによる被害額は、イノシシやヒヨドリはもちろん、スズメと比較してもかなり小さいことが分かります。

ただし、この統計は都道府県が市町村からの報告をもとに把握した被害額です。全国の金額が小さいからといって、個々の農地でモグラ被害が問題にならないという意味ではありません。

フーセンガム以外なら何をすればいい?

まずは、本当にモグラによる被害なのか確認しましょう。モグラ塚や根の浮き、かじり跡などが判断材料になります。

モグラ塚、根が浮いて傾いた苗、根菜のかじり跡からモグラ被害かを見分ける3つのポイント

音や振動を利用する方法については資料によって評価が異なるため、確実に追い払える方法とは言い切れません。

このように、モグラ対策は方法によって効果の評価が異なります。何かを置けば必ず追い払える、という単純なものではありません。

薬剤を使用する場合も、ネズミ用など別用途の製品を自己判断でモグラに転用するのは避けましょう。

農薬に該当する製品について、農林水産省は、登録されていない農薬は使用できず、登録農薬であっても「使用できる作物」「使用時期」「使用量」などの使用基準以外の方法で使用してはいけないと説明しています。

東京都の農業向け資料では、音や振動による追い払いも防除技術として紹介されています。一方、農研機構では、風車などの振動や電子音を利用した機器を試した結果、ほとんど効果は期待できないとしています。海外のアイオワ州立大学も、音波・超音波・電磁式の装置を効果のない対策として挙げています。資料によって扱いは異なりますが、音や振動だけに頼るのは避けた方がよいでしょう。

家庭菜園でモグラを捕獲・殺傷してもいい?

ここからは、駆除効果とは別の法律上の話です。

環境省によると、鳥獣保護管理法では野生鳥獣の捕獲・殺傷などは原則として禁止されており、被害防止など一定の目的で捕獲する場合には、原則として環境大臣または都道府県知事などの許可が必要です。都道府県によっては、権限の一部が市町村へ移されている場合もあります。

したがって、「自宅の家庭菜園にモグラが出たから自由に捕獲・殺傷してよい」というわけではありません。

フーセンガムを穴に入れる行為そのものの適法性について、本記事では一律に断定しません。少なくとも、モグラの捕獲・殺傷に当たる行為を行う場合は、鳥獣保護管理法上の許可や特例の有無を確認する必要があります。

判断に迷う場合は、都道府県や市区町村の鳥獣保護・鳥獣被害対策の担当部署に確認するとよいでしょう。家庭菜園で捕獲器を使用したい場合も、設置する前に捕獲許可の要否を確認してください。

農業・林業ではモグラ捕獲の許可が不要になる特例がある

一方、モグラ科には農業・林業に関する特例があります。

鳥獣保護管理法施行規則では、モグラ科全種を対象として、農業または林業の事業活動に伴い、やむを得ず行う捕獲等については許可を必要としない仕組みが定められています。

山梨県も、農業または林業の事業活動に伴い、やむを得ず行うモグラの捕獲等については、鳥獣保護管理法第13条第1項により捕獲許可が必要ないと案内しています。

鳥取県も、農業または林業に係る被害を防止する目的に限り、モグラ科全種を随時捕獲できると説明しています。

ただし、「農家ならどこでも、どのような目的でも自由にモグラを駆除できる」という意味ではありません。

法令上の特例は「農業または林業の事業活動に伴い、やむを得ず行う捕獲等」に限られています。

山梨県有害鳥獣捕獲実施要領では、専ら趣味として行われ、事業活動とはみなせない家庭菜園などは「農業又は林業の事業活動」には該当しないとされています。したがって、趣味の家庭菜園だからモグラを自由に捕獲・殺傷できるわけではありません。

特例に該当するか分からない場合は、自己判断せず、自治体の鳥獣保護担当部署などへ確認するのが確実です。

まとめ

フーセンガムは、効果が確立されたモグラ対策とはいえません。海外の大学資料でも、チューインガムは効果のない方法として挙げられ、試験ではモグラがガムを無視した例も報告されています。

また、モグラはニンジンやイモなどの植物を主食にしているわけではありません。農作物への被害は、主にトンネルを掘ることで根を傷めたり、苗を倒したりする間接的なものです。

令和6年度の農林水産省の統計では、モグラによる農作物被害額は699万円でした。ほかの主要な鳥獣と比べると小さいものの、実際に農業被害が発生していることは分かります。

フーセンガムに頼るのではなく、まず被害の原因を確認し、適切な対策を選ぶことが大切です。捕獲や殺傷を伴う方法については、農業の事業活動に関する特例もあるため、自分のケースが該当するか分からない場合は自治体へ確認しましょう。

法律に関する注意
本記事は一般的な法令・制度を解説したものです。捕獲・殺傷の可否は、場所、目的、方法などによって異なる場合があります。個別のケースについては、都道府県や市区町村の鳥獣保護担当部署などへご確認ください。

引用・参考資料

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